元厚生労働事務次官の村木厚子さんは、昇進を迷う女性に「オファーがあったら受けてほしい」と語ります。仕事で失敗したときの具体策や部下・後輩との接し方、そして「一市民として」の、退官後の活動について聞きました。新刊「日本型組織の病を考える」に関連して、組織の中での働き方についてもお話しいただいています。



元厚生労働事務次官の村木厚子さん

【質問6】失敗したときはどのように対処しますか?

【回答】できることを書き出します

 失敗するとパニックになりますが、取り戻すためにできることは意外と限られています。まずは「すぐできること」「明日になればできること」、「条件をクリアすればできること」の三つに分けて、書き出してみるのです。条件をクリアすればできることというのは、例えば「Aさんを説得すればできる」といったことです。事態が変わっていなくても、整理するとすごく落ち着きますし、書き出せば抜け漏れも発生せず、将来までトータルに対応できます。そして、まずは今できることに集中する。これが真面目な答えです。

 もう一つ、真面目じゃない答えがあります。「ほえる」です。わが家には「ポチ」という犬がいます。私のことです。子どもが小さい時に、叱ったり急かしたりしているのが嫌で、ポチという存在を発明しました。娘を叱っていても、娘に「ポチ」と言われたら、私は「ワン、ワン」としか言えなくなるんです。子どもたちが大きくなって活躍の場がなくなったポチですが、今は嫌なことがあったときに、ほえるんです。言葉にするのも嫌な内容や、家族に聞かせても楽しくない話はいっぱいありますよね。お風呂に入る時などに「ワオーン」とほえることで、「私はつらいのよ」という気持ちは伝えつつ、中身は話さないようにする。ほえる声の感じで憂鬱な気持ちなのか、失敗して恥をかいたことを思い出しているのか、だいたい伝わります。

【質問7】昇進をすすめられたら?

【回答】オファーがあったら受けてほしいです

 私がこう思った原点は、労働省(現 厚生労働省)に入った時に遡ります。就職するとたくさんの先輩に出会いますよね。その時に、仕事を一生懸命やって昇進をした人たちが魅力的で生き生きしていて、かっこいいと思ったんです。反対に「この程度でいいや」という感じで働いている人たちが、なんとなくよどんで見えました。仕事を楽しんで、チャレンジしていく人のほうがすてきになると思います。

 オファーがあるというのは、客観的に見て実力があるということ。今までジャンプや背伸びをしないと見えなかったものが、階段を上ることで自然と見えるようになります。下の段では見えなかった景色が見えることで、楽になる部分もあります。

 ある時、大学の講演で、学生にこの話をしたんです。それを大学の事務をしている女性も聞いていたらしく、何年後かに再び講演に行ったら「課長のオファーがあったときに、村木さんの話を思い出して、勇気を出して受けました。ありがとうございます」と彼女に言われました。そしたら、一緒にいた二人の大学教授が「僕らが『ありがとうございます』です」と言ったんです。彼女が課長になってくれたことで、大学の先生方が助かっているという話でした。本人もですが、周りも「ありがとうございます」なので、すごくよかったと思います。