【質問8】部下や後輩と接するときに気を付けていることはありますか?

【回答】決めたらあまり変えない、素直に人の意見を聞いて部下にも頼る

 気を付けているのは、決めたらあまり変えないことです。判断を間違えていたらすぐに変えなければなりませんが、「前の判断では90点だけど、こうしたら95点取れるかもしれない」というときには、後で変えたり直したりはしません。部下の手間がかかるからです。上は決めるのが役目だから、決めたらできるだけ判断を変えないようにしています。

 もう一つは部下に聞き、頼るということ。労働省と厚生省が統合して厚生労働省となったため、私は部下より素人だけどポジションは上になるということが起きました。詳しくなくても責任を負い、判断をしなければならない。そこで変に身構えて上司らしくしようとすると、攻撃的になったり、意地を張ってよく分からないことを判断して失敗したりします。そうならないよう、素直に人の意見を聞いて、部下にも頼るようにしました。判断材料をよく聞けば、きちんと判断を下せるのが年の功なので、分からないことはできるだけ部下や後輩から聞きます。

素直に人の意見を聞いて、部下にも頼ることを心掛けたそう
素直に人の意見を聞いて、部下にも頼ることを心掛けたそう

【質問9】組織の中で理不尽に感じることを求められたら?

【回答】年齢と責任によると思います

 若くて経験もない時に、やりたいこと/やりたくないこと、できること/できないことを言っていると、多分マイナスがたくさんあります。職場で嫌われるかもしれないし、自分も成長しないかもしれない。責任が軽い時期は、言われた仕事をできるだけこなしてみるのが大事だと思います。でも、ある程度物事の判断がつくようになった時に、どうしても自分の主義に反することを求められたらNOと言ってみればいいし、辞める覚悟をしてもいいと思うんですよね。私は40歳前後で課長になる時に、これから責任が重くなると思い、公務員宿舎を出て、家を買いました。辞めたら住むところがなくなるのはつらいですよね。最後に「辞めてやる」と言えるかどうかは大きいんです。

 それから、自分が何かをしないために辞めても、他の人がそれをやらされたなら同じことになるので、ダメだと思ったらちゃんと言うことが大切です。新刊のテーマにも関係しますが、財務省の中で改ざんがあった時に、誰かが相当大きな声で「これはダメだし、やってはいけない」と言っていたら、改ざんは止められたかもしれません。そうやって声を上げられないと、結果的に組織も本人もダメージを受けてしまいます。自分の中の譲れないものは大事にしたらいいし、声を上げればみんなも組織も救われるかもしれません。