【質問2】女性が仕事を辞める、辞めない。その一線の違いはどこにあると感じますか?

【回答】「仕事って面白い!」と思える経験をしたかどうか。

 それはずっと私の中で問い続けているテーマですね。私自身の経験を振り返り、周りの女性たちの声を拾いながら感じたのは、その違いはほんの紙一重ではないかということ。

 その違いはきっと、「仕事を面白いと思える経験」「自分なりに仕事を工夫して楽しめた経験」の有無。一言で表すと「やりがい」を心の底から感じられたかどうか。それを1回でも味わえた人は、「働き続ける」という決意を無意識にでもしていくのだと思います。もし子育て中に夫の単身赴任が決まったとしても、仕事を続けたい意志が固ければ、なんとか乗り越えようと周りの手も借りて総動員で工夫しようとするんですよね。「制度を整えれば、女性は長く働き続けてくれる」と思いがちですが、それが本質ではないと私は思っています。

 本を書くに当たって対談させてもらった国保祥子さん(「育休プチMBA勉強会」代表)の分析がとてもふに落ちたのですが、曰く「『働く覚悟』と『辞めない覚悟』は大きく違う」と。

 仕事の面白さを体感して「働く!」と決めた女性は何があっても仕事を手放さないけれど、「仕事を辞めないでいよう」の覚悟で続けていた女性は保活でつらくなったり、ハードな業務で消耗したりといった壁に当たったときにポキンと折れてしまう。

 やはり、できれば20代の若いうちに、仕事の面白さを体感できる経験をすることは大事。そういうチャンスが降ってきたら、どんどんチャレンジしたほうがいいと勧めたいですね。

【質問3】浜田さんはどんな「入社1年目」を過ごしましたか?

【回答】超が付くほどのダメダメでした。

 入社1年目の私は、本当にダメダメでした。出来が悪く、やる気もなし。大げさでなく、当時の私を知る人たちは、まさか私が編集長になるなんて思わなかったはずです。私自身も思っていませんでした。

 新聞記者になりたいと思って新聞社に入ってはみたけれど、配属された支局での長時間労働に体と心がついていかなくて。今はずいぶん緩和されているようですが、「1年目だから」という理由で地元の警察に2時間おきに電話をかけ続けるとか、今思えば理不尽な苦行だらけだったんです。配属先に女性の記者は私一人。男性たちは取材先と空き時間にマージャンをしたり、野球中継を見て、仲良くなって特ダネを取るけれど、私は全然入り込めない。

 入社3日目で音を上げて「ちょっとした腹痛」を理由に欠勤したんですよ、私。上司も驚いたみたいで、「大丈夫か」と家まで飛んで来ました。そりゃ、びっくりしますよね。なにせ入社してたった3日で休んじゃったので(笑)。

 朝7時から深夜2時まで働く生活がしんどくて、毎日寝不足で、移動の合間に少し時間が空けば、コンビニの駐車場に車を停めて(当時は仕事の移動に使う車を個人でローンを組んで買うのが通例でした)仮眠を取っていました。

 いつ辞めよう、もう辞めたい……という弱音が顔に書いてあったんでしょうね。最初に付いたデスクから「浜田さん、嫌でも3年やってみなさい。3年やってみて辞めたかったら辞めていいから」と言われました。

あの頃の私の顔には「早く辞めたい」って書いてあったんだと思います(笑)
あの頃の私の顔には「早く辞めたい」って書いてあったんだと思います(笑)