「『趣味は美術館めぐりです』と言ってみたいけど、私には美術をたしなむほどの知識はこれっぽっちもない!」 そんなあなたに200%共感するアラサーライター・小泉なつみが、素人目線で絵画を楽しむ方法を模索し、専門家に突撃インタビュー。「印象派」を代表するルノワールの絵画を、美術に疎いアラサー女子でもワクワクして楽しめるような、とっておき情報をお届けします。

 国立新美術館で開催中の「オルセー美術館・オランジュリー美術館所蔵 ルノワール展」。その目玉は、印象派時代の最高傑作とも評される「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」の初来日! ……といっても、ルノワールという響きで喫茶店のほうが先に思い浮かんでしまう美術チンプンカンプンという方も多いのではないでしょうか(筆者もこっち)。

 どちらかというと「おしゃれは好き」な私は、今回はちょっぴり目先を変えて、巨匠・ルノワール作品をファッションの観点から紐解き、絵画の面白さを再発見したいと思います。そこで突撃インタビューをさせていただいたのは、西洋服飾史を専門にしている日本女子大学家政学部被服学科准教授の内村理奈さん。さあ、内村さんとともに、「ルノワール×お洋服」の世界を堪能してみましょう!

ルノワールは雑誌をお手本に絵を描いていたかも?

 今から100年以上前のフランスで活躍していた、ルノワールことピエール・オーギュスト・ルノワール。

《アトリエで座るルノワール》
1892年以降 オルセー美術館
(C)Musée d’Orsay, Dist. RMN-Grand Palais / Patrice Schmidt / distributed by AMF

 教科書などで一度は彼の作品を目にしたことがあると思いますが、ルノワールを含む「印象派」の画家たちは日常生活を描いているんですね。

 「神話や宗教を描いている絵画にはストーリーがあります。そのため、知識がないとなかなか楽しめないという人が多くいるのに対して、ルノワールなどの『印象派』が描く当時の日常生活の絵画は日本人にも理解しやすく、とっつきやすいようですね」(日本女子大学家政学部被服学科准教授の内村理奈さん/以下「」内、同氏)

 服飾史を専門としている内村さんは、ルノワールの作品のどんなところに魅力を感じるのでしょう。

 「私自身、以前からルノワールの絵画を見るのは好きでしたが、今回改めてルノワールの作品に真正面から向き合い、魅了されています。彼はとてもファッションに興味を持っていたようで、当時の流行を的確に掴んでいたと思っています」

 へぇ~。“優しそうなじいじい”といった感じのルノワールですけど、お洋服ラバーだったんですね。俄然、親しみが湧いてきました。

 「今は『JJ』や『anan』のようなファッション誌が主流ですが、当時のパリには、流行のファッションについて書いている、いわゆるモード誌が存在していました。そこには最新のお洋服を版画で見せる『ファッションプレート』が挟まれていたんです」

左が当時のモード誌の表紙。右がモード誌に挟まれていたという「ファッションプレート」。色鮮やかでかわいい(日本女子大学家政学部被服学科所蔵/編集部が撮影)
左が当時のモード誌の表紙。右がモード誌に挟まれていたという「ファッションプレート」。色鮮やかでかわいい(日本女子大学家政学部被服学科所蔵/編集部が撮影)
左が当時のモード誌の表紙。右がモード誌に挟まれていたという「ファッションプレート」。色鮮やかでかわいい(日本女子大学家政学部被服学科所蔵/編集部が撮影)

「そして、ルノワールをはじめとする当時の一流画家たちが、この『ファッションプレート』を参考にしたと思われる作品がいくつか存在するんです」

 え! ……ということは、私たちが有名人のInstagramを見てマネをするように、ルノワールも雑誌で最新ファッションを研究していたかもしれないということですね。