「仮説」の概念が変わる一冊

「ぼくらの仮説が世界をつくる」佐渡島庸平

ぼくらの仮説が世界をつくる

佐渡島 庸平著
ダイヤモンド社
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 この本を読むことで仮説の概念が変わると思います。自分の考えから仮説を導き出し、それに対する情報を結び付け、どう実行すれば成功につながるかが書かれた1冊です。

 仕事に限ったことではありませんが、何かを始めるときには、まずは仮説(計画)を立てますよね。そのとき、実績などのデータも重要ですが、自分の価値観で仮説を立てるところからスタートすることもアリだと気付かされます。

 仮説を立てる際は、実績や将来の予測からは考えない。自分の感性、日常生活で集まってくる情報をもとに、自分の価値観で仮説を立てるところからスタートする。その後に実績や予測などの情報(データ)を集める。もしそこで間違いが分かれば、また仮説を立てればいいと佐渡島さんは書いています。

 誰もが失敗は怖いわけで、つい過去の事例から調べてしまいがちですが、それだと全くの新しいことはできませんよね。それを打破するために、まずは仮説ありき、自由な仮説を立ててから情報を集めることが大事だと。

 もちろん過去の事例を否定したいわけではありません。過去は過去。そのデータは時代によって変化するものだし、データの集め方によって良い面も悪い面もある。集まったデータだけが正しいとは限らないし、そのとき集められなかったデータの中に正解があるかもしれない。常にいくつもの視点を持っていることが重要なのかもしれません。

箇条書き一つで相手に伝える

「超・箇条書き」杉野幹人

超・箇条書き
「10倍速く、魅力的に」伝える技術


杉野 幹人著
ダイヤモンド社
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 箇条書きの書き方が書かれた1冊。そもそも箇条書きの説明に長々と1冊も……と思ってしまいがちですが、目からウロコの内容でした。

 箇条書きを、ただの見出しやポイントの列記くらいに思っているならば、この本は大きく役に立ちます。書き方一つで相手に自分の伝えたいことを理解させる。それにはどんな技術が必要か、それが細かく書かれています。

 そもそも箇条書きの本来の目的は、より短い文章で相手にこちらの思いをサクッと伝えることです。しかしどのポイントをどうまとめて1行にするかによって、伝わるものも伝わらない、もしくは間違って伝わってしまうこともあります。

 中でもグッときたのは、「伝えたい相手の情報処理能力を見積もって、その上で、相手に合わせた分かりやすい箇条書きを作らなければならない」ということ。

 自分が伝えたいことだけを箇条書きにしても伝わらない、何をどうやって相手の理解力、状況に合わせて箇条書きにするかによって勝負が決まると言っても過言ではないと本書は教えてくれます。

小説は苦手…な人におすすめ

「騙し絵の牙」塩田武士

騙し絵の牙

塩田 武士著
KADOKAWA
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 最後はビジネス書ではなく小説です。私は大泉洋さんのファンなのですが、本作はそんな大泉さんを当て書き(その役を演じる俳優をあらかじめ決めておいてから脚本を書くこと)したことで話題になりました。小説を読むときには自分の頭の中で登場人物の容姿を想像するものですが、本作に限ってはその必要はありませんでした。

 タイトルからミステリー要素を感じますが、内容は人間ドラマです。雑誌編集者の葛藤を描いた本作は、雑誌廃刊を阻止しようとする編集長とその部下、そしてそれらを取り巻く作家の心理(本音と建前、そして悪巧み)を描いています。

 それ故、読み進めるほどに、当て書きが生きてきます。大泉洋という役者のパワーが文章に乗り移り、セリフに合わせた所作までを感じるほど。むしろこの当て書きというものを自分の中で昇華し、当て読みをしては面白いのではと思い始めるほどです。

 今後、小説を読むときには好きな芸能人などを勝手に当てて読むことで何倍も面白くなると気付かされた1冊です。どうも小説は苦手で、ドラマや映画になったら見るようにしている、なんて方に特におすすめです。

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 以上、おすすめの5冊を紹介させていただきました。骨太の小説を読みながら、息抜きにビジネス書を挟むのもいいかもしれません。楽しんでもらえるとうれしいです。

文/永井勇成