小泉今日子『黄色いマンション 黒い猫』

年を重ねることが楽しみになってくる

 キョンキョンこと小泉今日子さんが、9年に渡って雑誌に連載したエッセイを書籍化。青春時代を過ごした原宿の思い出や、アイドル時代の失恋話、50歳を迎えた心境までを包み隠すことなく綴っています。

 軽やかな語り口に引き込まれるようにして読み進めると、その中に散りばめられたいくつもの「喪失」に気付かされます。アイドル時代の後輩の死、父の死、離婚、友人の死、姉の死、そして愛猫の死……。

 本著は小泉今日子という一人の女性の半生を綴った作品であると同時に、原宿という街の歴史を鮮やかに切り取った一冊でもあります。今はないホコ天、日本で初めてできたクラブ、クリエイターが集うアパートの地下にあったブティック街。そして今はもうない「原宿」という町名に自分をなぞらえて「今でも誰もがそこを原宿と呼ぶように」「私が生きた証を、どんなに小さくてもかまわないから、残せたらいいなと思いながら、また生きようと思う」と小泉さんは記しています。

 忙しい毎日の中で「すり減っている」と感じたときは、立ち止まって自分の生きてきた道を振り返ってみてはいかがでしょうか。その道のりの中に、明日への希望が見えてくるかもしれません。

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