東村アキコ『かくかくしかじか』

何のために働いているのか、分からなくなった時に

 2017年1月にドラマ化が決定し、早くも話題となっている『東京タラレバ娘』。その作者、東村アキコさんの自伝的漫画です。漫画家を夢見る高校生・アキコは、友人に誘われて美大進学のための予備校に通い始めます。そこで出会ったのは、生徒のデッサンを罵倒したり竹刀で殴ったりと、スパルタ指導を行う日高先生でした。

 日高先生の言動に驚きながらも、絵に対するストイックな姿勢や過激さの裏に隠された優しさを慕っていくアキコ。しかし、アキコを本格的な画家にしたいと考える日高先生と、あくまで少女漫画家になりたいアキコとの間に、次第に溝が生じ始めます。

 連載当初から「現代の『まんが道』」「笑って泣ける漫画」として人気を集め、「マンガ大賞2015」なども受賞した本著。全5巻を通して感じるのは、東村さんの漫画への情熱と愛です。離婚して辛い時期も、体調が優れないときも、ネットで叩かれても本が売れなくても、「でも私はあの日々のおかげで しんどくてもなんか 描ける」「いつも 描いている時は 私の頭の中で先生の声がする」と東村さんは日高先生との日々を振り返ります。

 自分が何のために働いているのか、今の仕事が本当に好きなのか分からなくなったときに、ぜひこの漫画を手に取ってみてください。日高先生の「声」の意味が分かったとき、読者の皆さんも涙が止まらなくなるかもしれません。

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文/樋口可奈子