今の彼女は残業三昧の日々を続ければいい

ニケ  でも、この女性は「本当は趣味にも時間を使いたい」って言っていますよ。それだったら習い事とか始めればいいんじゃないですか?

カワイ  それができないから、悩んでいるんでしょ?(笑)

 「できない」には、二通りの「できない」があります。一つは、「一歩を踏み出す勇気が持てないから、できない」ケース。もう一つは、「そもそも踏み出す気がないから、できない」ケースです。

 彼女の場合は、口では「やりたい」と言いながらも、心の奥底では「やりたい」と思っていない。だったらやらなきゃいいんだけど、「やりたくない」と決めつけるのも恐い。

 そんな自分を認めちゃった途端、本当に「仕事一筋の自分」になりそうで恐いのでしょう。たとえ仕事にやりがいを感じて「もっとがんばりたい!」と思っていても、結婚とか、出産とか、“自分が知らない経験”をして、キラキラ輝いている友人に少しだけ嫉妬することもある。そんな風に「嫉妬する自分」もイヤだから、プライベートを充実しなきゃって思い込むんです。

ニケ  なんだか、人間って難しいですね。

カワイ  そう。難しい。ものすごくややこしいんです。でも、解決策はものすごく簡単で、めちゃくちゃシンプルです。

 彼女は、そのまま残業三昧の日々を続ければいい。これがいちばんの解決策です。

ニケ  ええええ! ちょ、ちょっと待って! それって、相談の答えになってないじゃないですか!! ちゃんと答えてあげてくださいよ!

カワイ  ちゃんと答えていますよ。人生の中では、思いっきり仕事だけに打ち込みたい時期もある。そのときは仕事するエネルギーが有り余っているときなので、仕事に200%勢力を注げばいいんです。

 そもそもワークライフバランスって、仕事(=ワーク)とプライベート(=ライフ)を、50:50にすることではありません。本来のワークライフバランスとは、「仕事にも100%満足できて、家庭生活にも100%満足できるような、欲張りな生き方が可能な社会」を目指そうとするもの。

 仕事のプライオリティーが高い時期には、思う存分残業を繰り返しながらでも、「家庭生活を失うことなく」仕事に打ち込むことができる。

 一方、家庭生活のプライオリティーが高い時期には、「キャリアを脅かされる心配なく」仕事の時間や量を減らせる働き方。これが真のワークライフバランスです。

 今の彼女は、仕事にやりがいを感じていて、時間を忘れてしまうほど熱中できる環境にあるので、とことん仕事すればいいんです。

 踏ん張って必死で仕事をした経験は、必ず、3年後、5年後の人間的な成長につながります。もちろん体を壊したら元も子もないので、早く帰る日を週に1回は作って、体を休める時間は大切にしなきゃですけどね。

ニケ  あ~、なんかこの女性が、羨ましくなってきちゃいました。私、まだそこまで仕事に打ち込めないし。彼女とは全く逆で、仕事をどうしたら充実できるのかって悩んでいる方ですから。

カワイ  だったら目の前の仕事を、ただひたすら、一つひとつ丁寧にやりなさい。アレコレ悩まず、一つひとつただただきちんとやっているうちに、“仕事が楽しい!”とやりがいを感じる瞬間が必ず来ます。

 今のまま、“5時から女”で大丈夫。プライベートを大いに楽しみなさい。私もCAをやっているときは、遊ぶことしか考えていませんでしたから(笑)。