あるあるカイシャ事件簿「ひとりボッチになりたくない！ “帰宅恐怖症”」

一目惚れの瞬間を逃さない

ニケ 　ああ、なんか勇気がでました。薫さんもそうだったんだ～。ありがとうございます！ でも、彼女の場合、週に1回は早く帰るって決めても、結局、実行できない気がします。

カワイ 　以前、フィールドインタビューに協力してくれた男性に、彼女と全く同じ状況の人がいました。仕事大好き、長時間労働大好き人間で、仕事に200％のめり込んでいました。

　ところがある晩、残業中にお腹がすいたので談話室にカップラーメンを食べに行った。談話室にはテレビがあって、ラーメンすすりながらボ～っと見ていたら、「あなたも一緒にサンバを踊ってみませんか？ サンバメンバー募集中！」って、申込先のURLが画面に出た。それでとっさにアクセスして、申し込んでしまったの。

　彼は「魔が差した」って言っていたけど、セクシーな踊りをする女性たちに“魔”をつかれたんでしょうね（笑）。

　でも、この“魔”のおかげで、彼の人生は大きく変わりました。

　サンバクラブに行ったら、その場でサンバの旗持ちを命じられ、週1回だけ行く予定が、週3回のすべて練習に参加しなきゃならなくなった。仕方がないので必死に仕事を終わらせて、サンバに通うようになったの。そのときのことを彼は、こう言っていました。

　「サンバに通うようになって、自分がいかにダラダラと効率の悪い働き方をしていたかに気付かされました。それまでは何でもかんでも自分一人でやらないと気が済まなかったけど、時間内に終わらせるには周りの協力を仰ぐ必要がある。それで周囲とのコミュニケーションを密に取るようになって。そうしたら結構簡単に、時間内に仕事が終わるようになったんです。

　でも、それ以上に驚いたのが、『はるかに人生が楽しくなった』ことです」

　相談者の彼女も、「アレやってみたい！」と心が揺さぶられる瞬間が来たら、その気持ちを大切にしてほしいです。

　そして、サンバオジさんがそうだったように、「やってみたい！」ことができるサークルを見つけて参加してください。そうすれば今まで見えなかったモノが、必ず見えるようになります。自分もちょっとだけ変わります。いや、変わるんじゃなくて、成長します。

ニケ 　やってみたい気持ちか～。やってみたいことって、何でもいいんですか？ 例えば、仕事に生かせるようなモノのほうがいいとか？

カワイ 　なぁ～んでもオッケー。ポイントは、心が動いた瞬間を大事にすること。「なんかこの人好き」ってビビビとくる瞬間。あれと一緒です。一目惚れを逃すな！ 一目惚れしたら、突撃しろ！ ってことですね。

文／河合薫、写真／PIXTA