カリカリせずに、癒しホルモンを出すには

ニケ 上司をおだてるって、メチャクチャ大変じゃないですか?

カワイ そう、すっごい大変だったって。何で、俺たちがこんなことしなきゃいけないんだとも思ったって。でも、「仲間と一緒だったからできた」って言ってましたよ。

 夜、作戦会議と称して、一杯飲みながら、まず愚痴を言い合う。で、そのあと「ノセる方法」をみんなで相談するの。「これはどうだろう?」「こういう言い方にしてみては?」とか、アレコレみんなで意見出して。飲みながらだから、「そんなんじゃ、余計ダメだろう~」みたいなハチャメチャな意見も出るんだけど、それはそれで楽しくて。

 それで次の日は、“おだて作戦A”とか、“泣きつき作戦B”とか名前を付けて、それぞれの役割を決めてやったの。みんなで次々と作戦を繰り広げているうちに、上司の態度が少しだけ柔らかくなって、ちゃんと仕事をするようになってきたの。

 不思議でしょ。部下におだてられて変わったなんて、ちゃんちゃらおかしいですよね。

 でもね、ダメな上司にとって一番の恐怖は、“孤立”。孤立して自分の立場が危うくなることが恐い。特に、感情的な人ほど、自分に不利な空気を感じやすいから、孤立を感じれば感じるほど、頑なになる。自分に威厳を保つために、余計に部下を否定するようになる。でも、彼らのおだて作戦のおかげで、上司は孤立しないで済んだ。それが功を奏したんでしょう。

カワイ 人間関係って反面教師みたいなところがあって、意地悪されたら意地悪になるし、挑戦的だと挑戦的になる。この人、私のこと大切にしてくれてる、って思うと、よほどの悪党じゃない限り、ひどいことはしないものよ。

ニケ “悪党”って……。時代劇みたいですね(笑)。

カワイ あら、だったら悪者? なんでもいいわ~。

 いずれにしても、もう一つ、彼はとっても興味深いことを言っていました。「上司をおだてながら仕事をしてみると、意外と上司から学ぶところもあるんですよね」って。

ニケ え~、本当ですか? でも、今回の相談者の人の上司って、頭固いし、感情的だし、学ぶところなんて一つもなさそうですよ。

カワイ ううん、ちゃんとある。絶対にあります。ちょっとニケさん、聖母マリアになった自分を想像してみて。

ニケ う~ん……マリアさま、マリアさま、私はマリアさま……? う~、なんかよく分からないけど……。

カワイ (笑)。いい人を演じていると、不思議と次第に優しい気持ちになっていくものなの。その「人に優しくすることで、自分も癒される」という心のメカニズムを利用したセラピーもあるのよ。

 心がホワッとしてくると、それまでは見えなかったモノが見えてくる。実際、優しい人を演じているときに脳波を測ると癒しのホルモンが分泌されたり、リラックスしている状態になることが分かっています。

 なので、おだて作戦をやっているときって、確かに大変なんだけと、うまく演じられると心がしなやかになって、ネガティブな感情に支配されているときには見えなかったことが見えるのよね。

ニケ おだて作戦、恐るべし! カオルさんも“聖母マリア”目指してくださいよ!(笑)

カワイ そうね~。……ん? ええ? ち、ちょっと! どういう意味!? コラ~ッ~!

文/河合薫、写真/PIXTA

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