言葉を置き換えて、想像力を広げてみる
カワイ この歌詞に対する、私の感想ね。
私は、最初にこの歌詞を見たとき……、ちょっと悲しかったの。子どもの気持ちになってしまったのね。「そっかお母さん、僕のために仕事を辞めて、おしゃれやめて、『女性』から『お母さん』になっちゃったんだね。僕がいなかったら、お母さんはもっと自由に生きられたのに、ごめんなさい」って申し訳なく思う子どもの気持ちにね。
つまり、もし、この歌詞に問題があるとしたら、それを聞いた子どもの気持ちまでを考え抜くことが足りてなかったんじゃないかなと思っているの。
作詞を担当したのぶみさんはお母さんたちにエピソードを募集して作ったとコメントしてたけど、そのときお母さんたちは、「うれしそうに」エピソードを寄せてくれたんじゃないでしょうか。ホラ、よく男の子のお母さんが、やんちゃな息子に「ババア」とか言われながら、「コラッ!」と表向きは怒りながらも、うれしそうに子どもの面倒を見てるじゃない。あれと同じですよね。
歌詞では、「あたし おかあさんだから あたしよりあなたの事ばかり」って最後にあるけど、お母さんたちの真意をくみ取れば、「あなたの事ばかり考えちゃうほどあなたが宝物なの」ってことですよね。
なので、もし、私が作詞を担当するなら、歌詞の「あたしおかあさんだから」という部分を「あなたは 私の宝物だから」という表現にします。
ニケさん、どう? こんなふうに表現を置き換えても怖い?
ニケ 「あなたは 私の宝物だから」……。うん! なんかいいかも! ちょっと言葉を変えただけなのにイメージが全然違う。
カワイ 批判するのもいいけど、それより「普通だったらできないような大変なことを、なぜお母さんたちはできるのか」――を想像してほしいの。
ニケ それは子どもが宝物だから! お母さんになってうれしいから!
カワイ 子育てはものすごく大変だと思います。だって、自分の思い通りには何一つならない。頑張ったからといって誰が褒めてくれるわけでもない。ずっと子どもとの世界で社会から隔離されている気持ちになる。永遠にその世界が続きそうな気持ちになる――。
でもね、そんな大変なことができるのは、「おかあさんだから」ではなく、「いとおしい子どもがいるから」です。これってものすごく幸せなことですよね。
ニケ そっか。おかあさんだから、って思うと、すごく怖くなるけど、いとおしい子どもがいるとそんな大変なこともできちゃうんだから、それってすごい! ……ん? でも、ニケにホントにそんなことできるのでしょうか。