大きく足を広げて、地面を踏みしめる

カワイ ……だって、こっちまで暗くなっちゃうんだもの。無言でコツコツ頑張ってる人のほうが、好きっていうかなんというか。そういう姿を見ると、「私も頑張ろう」って感動するしね。

 いずれにしても、今回の相談の結論から言うと、誰に何と言われようと、頑張って、働いて、稼げばいい。

 ただし、頑張って働いたからといって、稼ぎがよくなるか? というと、そうとは限りません。

 でもね、稼いでいる人は、例外なく頑張っている人でもある。

 つまり、大切なのは、「頑張る」ことより、「踏ん張る」こと。

 自分の期待通りの結果にならなくて、逃げ出したくなったり、あきらめそうになったりしても、踏ん張る。大きく足を広げて、地面を踏みしめるの。

ニケ 頑張るより、踏ん張る、ですか……。ああ、そうですよね。ついつい周りのせいにしたり、どうせダメだからとか、逃げちゃう。薫さんにも、そういうことってあったんですか?

カワイ 何度もありました。私は、「自分の言葉で伝える仕事がしたい」という気持ちだけで、スチュワーデスを辞めました。

 でも、辞めた後、周りの人たちは、「いい人見つけて結婚したほうがいい」とか、「元スッチーだったらいいダンナ見つかるだろ」って、散々言ってましたよ。相談者の女性が「給料のいい男性と結婚すればいいじゃん」と言われたように、ね。

 そうやって言われるとね、やっぱり不安になるの。「私には、ムリなのかな?」って。

 だって、「自分の言葉で伝える仕事がしたいんです!」なんて言葉とは裏腹に、CAを辞めて世間の冷たい風に吹かれて、「自分の言葉なんてない」ってことを痛いほど感じて。かなり自信喪失してたから、余計に、不安になった。

ニケ 冷たい風って?

カワイ 中途採用を受けにいっても、ことごとく落とされた。面接官からも、「いい旦那さん、見つけたほうがいいよ」って言われたこともあったしね。

 そもそも、元スッチーなんてファックス一つ送ることできない。電話一本とることさえできません。帰国子女なんて言っても、話せるのはしょせん、子どものときに耳で覚えた“child English”だからビジネスじゃ役に立たない。そんな使いものにならない28歳の女性を、雇ってくれる会社は一つもありませんでした。

ニケ そうなんだ……。周りから言われて、薫さんでも不安になったなんて、なんか意外だなぁ~。

カワイ もし、あのとき「家に入ってほしい」なんてことを言う男性に出会っていたら、それを受け入れたかもしれません。それくらい弱っていましたから。

 でも、幸いそういった機会はなかったし、私は自分の意志を通した。だから、今、ここにいるのよ。