無能な従業員が管理職になるディルバートの法則

カワイ そもそも組織は、損失を最小限にするために、「最も無能な従業員を管理職に昇進させる傾向がある」と皮肉られているの。いわゆる「ディルバートの法則」です。

 この法則は、米国で大人気の漫画『ディルバート(Dilbert)』の作者スコット・アダムズが唱えたもので、アダムズによれば、

 「組織の生産性に直接的に関係しているのは組織の下層部で働く人たちであり、上層部にいる人たちは生産性にほとんど寄与していない。だから無能な人ほど、生産性とは関連の薄い上層部に昇進させられることがある」。

 だから、無能な上司があっちこっちいる。ものすご~く納得しちゃう法則だと思わない?

ニケ ウケる~(爆笑)。アッハハ、メチャクチャ的を得てますよね~。要するに会社って、"優秀な部下"に支えれてるってことですよね~。ワタクシも、その一人です! あ~あ、だったら私たちに高い給料払ってくれればいいのに~。

カワイ それは無理ね。無能な人ほど、「自分は無能」とは思ってないですから(苦笑)。それに部下のときに優秀な人が、上司になった途端に優秀じゃなくなってしまうことがあります。

 これは「ピーターの法則」と呼ばれていて、カナダ人教育学者のローレンス・J・ピーターが提唱しました。

 会社では仕事で評価されると、その褒美として一つ上の階層に出世していくでしょ。ところが、人間には能力の限界もあれば、出世に伴って仕事の内容が変わることにうまく適応できないこともある。例えば商品を販売する能力の高い人が、必ずしも管理職としての能力にも長けているとは限らない。

 その結果、出世してたどり着いた地位がその人にとって「不適当な地位」と化し、周りからは「無能」と評されるようになる。これがピーターの法則です。

ニケ うわぁ~、確かに! いい営業マンがいい上司になるとか限らないし、プレイヤーとマネジャーは別の仕事ですよね。

カワイ その通りです。ディルバートの法則は無能な上司を皮肉った、ちょっと意地悪なものだけど、ピーターの法則は「仕事ができることの報酬として昇進だけを用いると、上司は無能な人だらけになるぞ」って、警鐘を鳴らしたのです。

ニケ でも、現状は仕事ができると昇進する。昇進すると部下を持つ。部下にとって、その人が上司。それで迷惑するのが、ワタシたち"優秀な部下"。この「ニケの法則」は堪え難いです~。薫さん、どうしたらいいの?

カワイ ニケの法則? ね(笑)。確かにね、「部下が生きるも死ぬも、上司次第」なんだけど、だからといって「上司がダメだと頑張っても無駄」ってことではありません。厳しいことを言えば、これは都合のいい言い訳でしかありません。

 相談者の方は頑張ってTOEICで高得点を取って、それを生かせるチームに異動したいわけで、そのことと「困ったちゃん上司」は別問題です。

 おそらく彼女は、「同僚が理不尽な仕打ちを受けている」のを目の当たりにして、上司に意見したり要望を伝えるのを恐れているのでしょうけど、だったら、上司の上司、つまり、困ったちゃんの上の人に一度時間を取ってもらって、「自身のキャリアについて」相談すればいいだけです。