「他人の痛みを感じること」を訓練する

カワイ ついついモテたいとか、信頼されたい、って気持ちが先行すると「周りの評価」ばかりを気にしてしまいがちです。大切なのは「どう評価されるか?」を気にすることじゃない。相手を思いやる気持ちを忘れないこと。優しい気持ちを忘れないことが大切なの。

ニケ 優しい気持ち……。

カワイ そう。優しい気持ちです。28歳マーケティングさんには、どうなのかなぁ?

 ちょっとだけ厳しいことを言いますね。彼女の相談は、「私は頑張っている」「私はつながりたいと思っている」「私の興味の持てる仕事が舞い込んでこないかなぁと思っている」「私は人が好き」「私は今のうちだと思ってる」――。

ニケ 「私」ばかりだ……。

カワイ ニケさん、司馬遼太郎さんは知ってますよね?

ニケ と、突然来ますね! 知ってますよ。歴史作家の司馬遼太郎でしょ?

カワイ 司馬遼太郎さんはノンフィクション作家として有名ですが、唯一子どもたちに向けて書いた本がある。「二十一世紀に生きる君たちへ」というタイトルで、その中に書いてあることを私は人生のバイブルにしています。

ニケ 聞きたい! 何て書いてあるんですか!

カワイ 「すなおでかしこい自己」を確立しようって言葉です。

ニケ 素直で賢い?

カワイ 「いたわり」「他人の痛みを感じること」「やさしさ」。この三つの感覚を訓練して身に付けよう。この根っことなる気持ちを訓練すれば、頼もしい人格を持てる。その訓練を続ければ、頼もしい自己が確立される。これは、いつの時代でも人間が生きていく上で、欠かすことのできない心構えだ、ってことを言っています。

ニケ へ~! 訓練なんですか?

カワイ 「自分ファースト」の感情はいわば、本能です。人間には自己防衛本能があるから、誰もが自分中心になりがちなの。一方、人をいたわる気持ちは本能ではないので、訓練が必要です。

人をいたわる気持ちを持つ訓練をしよう (C) PIXTA
人をいたわる気持ちを持つ訓練をしよう (C) PIXTA

ニケ 訓練って。どうやってやればいいんですか?