恵まれていることは自覚しよう

カワイ だって、営業の事務は大変なお仕事なのに、「機会」がものすごく限られている。出世の機会、昇進の機会、昇給の機会、正当に評価される機会、能力発揮の機会、人事異動の機会……etc.etc.の「機会」がない!

 裏方の仕事であるが故に、機会に恵まれない。でも、彼女には「機会」があった。うらやましがって、当たり前でしょ。

ニケ そうなんです! 社長賞もらった同期は、上司にいろいろな機会をもらっていました。海外出張に鞄持ちで連れて行ってもらったこともあったし、社内プロジェクトのメンバーになったこともあった。あ~、ホントうらやましいことだらけなんです。

カワイ 機会がないとモチベーションも下がるしね。

チャンスが欲しい……。チャンスがないと、モチベーションは下がる一方 (C)PIXTA
チャンスが欲しい……。チャンスがないと、モチベーションは下がる一方 (C)PIXTA

ニケ 機会がない職場って、罪、ですよね。

カワイ 「社員のモチベーションが低い」って嘆く上司は多いけど、「機会がないとモチベーションが低下する」という、環境と心の関係に気付く上司は少ない。

ニケ ……ってことは、相談者の女性は、上司に「他の営業事務にも営業手伝わせろ!」って抗議すればいいんですね!

カワイ それは危険です。抗議して、余計な火の粉が他の営業事務の方たちに降りかかったら、ますます人間関係悪くなるでしょ。

ニケ じゃ、どうすりゃいいんですか!

カワイ どうしましょうね~。

ニケ う~ん、どうしましょう……ん? 違う違う違う~。ちょっと薫さん! しっかりしてくださいよ!

カワイ しっかりしてますよ。つまり、ね。こういう「うらやましか~」問題って、どうにかしようとすればするほど、こじれがちなの。

 例えば、なんとか取り繕って一緒にランチに行ったとしましょう。彼女は仕事の話をしづらいですよね。「こんなことがあって、あんなんことがあって、大変~!」なんてポロッと言おうものなら、一斉に反感を買います。かといって、営業事務の人たちの話に混じって話をするのも難しい。

 「営業の仕事やらせてもらってるんだから、いいじゃない! アナタに言われたくない」って、営業の事務の女性は思いますよね。

ニケ 確かに。じゃ、放っとくしかないんですか?

カワイ その通りです。「気にしないようにする」のではなく、気になっても、時の流れに身を任せる。

 時間が過ぎると、やっかみでこわばっている事務の人たちの心も和らいできます。

 すると、なんて小さなことでイライラしてたんだろう? とか、なんであのときは優しくできなかったんだろう? って、自分を恥ずかしく思う。そうなったときに素直に話ができると、「真の戦友」になれるの。

ニケ 戦友。いいですね! 薫さんもやっかんだ経験あるんですか?

カワイ う~ん。私はやっかまれてることに気付かないで、いろんな人を傷つけたり、不愉快な思いをさせてしまった。もっと相手の心情を理解して振る舞わなくてはいけないのに、それを全くしなかった。