会社に所属しているという安心感をどうとらえるか
カワイ 「ない」といったらウソになります。(喉の辺りを触りながら)何度もこの辺りまで、「辞めなきゃよかった~」って言葉が出そうになった。でも、それを言った途端、本当に後悔しそうで、必死に飲み込みました。
ニケ 会社辞めると、会社のありがたさがわかるっていいますもんね~。
カワイ 3年前に、ANAの汐留の本社に対談で行く機会があった。そのときにものすごく、不思議な経験をしました。
ニケ 「アナタは後悔してますね~」と占い師に言われたとか? あるいは、「CAになりませんか?」ってナンパされたとか? そういう話ですか?(笑)
カワイ なんじゃそりゃあ(苦笑)。
その日の私は、通勤時間と重なる時間帯に大江戸線に乗っていました。周りはビジネスマンばかりでした。それでだんだんと汐留に近付くにつれて、どういうわけか私の脳内で、「今、ANAの社員だったら」という妄想劇場が開演したの。
妄想劇場での私は……、現実世界では、決して抱いたことのない感覚を感じていてね。なんというか、それはとてつもなく心地良くて。安心していて、心地良さの真ん中には“誇り”があった。
この感覚は、所属する集団のない丸裸の現実世界にいる“今”の私は、抱いたことのない感覚だった。
ニケ それって、「ANA」という属性をまとう、安心感みたいなものですか?
カワイ そうです。つまり、この心地よさこそが、「会社員でいる」ことと、「フリーランス」の違いなんじゃないでしょうか。妄想劇場の私は、とても心地よさそうでした。
ただ「28歳の私」は、この心地よさに息苦しさを感じて、「河合薫で勝負したい! 自分の言葉を持ちたい」って辞めた。
心地よさは諸刃の剣です。
つまり、何を決断するかではなく、決断した後に「どうするか」で、決断が正しかったかどうかが決まります。
決めた後に「絶対にどうにかしてやる!」って、ふんばり続けることができるかどうか。自問するしかないでしょうね。
ニケ あ~、ますます相談者の方は悩みそうだなぁ~。あっ、いいこと思いついた! とりあえず今の会社は辞めて、サロンに転職し、そこでネイリストデビューする。フリーランスになるのは、それから考えるっていうのでどうでしょう? その方が安定してるし、転職のリスクないですよね?
カワイ 計算通りにいかないのが人生です。人間は追いつめられた方が、底力を発揮します。
ニケ さすが勝負師! 薫さん、本当、「さあさあ、張った張った、丁か半か!」のバクチみたいな人生好きですよね~。
カワイ あら、そう? いずれにしても、彼女は「ネイリストになって何をしたいのか?」を考えないとダメよ。女性をきれいにしたいのか? 有名になりたいのか? ファッション関係に進む第一歩とするのか?
ニケ それが軸になるんですね! よし! 私も考えよう!
カワイ え? ニケさんも?
ニケ は、はい! 張った張った、ですよ! 頑張ります!
文/河合薫 写真/PIXTA
記事一覧ページはこちら ⇒ 【河合薫の「女性のリアル人生相談」】
【河合薫さんのFacebookページ】でも発信されています。
フォローすれば、記事公開のタイミングも分かりますよ!
※カイシャやオシゴトにまつわる悩みをお持ちの方は、ぜひ、【日経BP社お問い合わせフォーム】よりお寄せください。その際には、必ず「河合さん連載」と明記してください。こちらの連載を通じて河合さんに回答していただけるかもしれません。個別のお返事はしておりませんので、ご了承ください。