敬意を表すのも一つのスキル

ニケ っていうか、聞いてもいないのにアレコレ言ってくるのが問題なんじゃないですか?

カワイ 26歳公務員さんは、元上司が言うことに納得できないわけですよね?

ニケ はい。

カワイ だったら「それはどういう意味ですか?」とか、「なぜ、それをやらないといけないんでしょうか?」と納得できるまで聞けばいい。

ニケ そんなのムリですよ! 相手は年上ですよ。

カワイ あ、また言い訳した。

ニケ え?

カワイ 「元上司だから」「年上だから」って、言い訳だらけじゃない。

ニケ (ギクッ)で、でも、26歳公務員さんが言う通り「接し方にはかなり気を使っている」のであります。

カワイ 大切なのは気を使うことじゃなく、相手に敬意を持つことだと思いますよ。

ニケ 敬意、ですか?

カワイ 確かに「定年で再雇用された元上司」は厄介な存在かもしれません。でもね、「年功序列で偉くなっただけじゃん」とか、「この人たちが会社にしがみつくから自分たちの給料が上がらないんだ!」とか内心思っていないかしら?

ニケ うっ。「全く思ってない」と言ったら嘘になります。

カワイ 人間って、「この人は自分のことをどう思っているのかな?」と感じ取りながら相手とコミュニケーションを取るの。「自分のことをバカにしてる」とか「自分のことを哀れんでる」と感じた人は、余計に自分を大きく見せようとする。

 自分の権威を強調するためにあれこれ指図したり、言わなくてもいいような意地悪な一言を言ったり。そんなコミュニケーションは当の本人だって心地良いわけないのに、つい自分の存在を誇示したくてやってしまうのよ。

ニケ じゃあ、「会議で何話してた?」とかしつこく聞くのは?

カワイ 仲間外れにされたくない。

ニケ 「何してるんだ?」ってしょっちゅう聞くのは?

カワイ ニケさんのこと、俺は気にしてやってるんだぞ、と言いたい。

ニケ う~、気にしてくれなくていいです。

カワイ そう思っちゃうわよね(笑)。要するにさみしいのね。

ニケ そっか。ニケ、分かりました! キャッチボールをしてあげればいいんですね。

カワイ その通りです。面倒臭いかもしれないけど、元上司が投げたボールを一度キャッチして投げ返す。相手がまた投げてきたら、納得するまで投げ返す。ある意味「敬意もスキル」と割り切って、会話のキャッチボールをしてほしいのです。

ニケ 会話のキャッチボールをすれば、相手は「俺のことバカにしてるな」とは思わないってことですね。……あ! そういえば確かに前髪クネ男もそうだったかも。ニケが前髪クネ男の呪縛から解放されたのは、山寺さんのおかげなんです!

カワイ 山寺さん?

ニケ パートで来ている山寺さんって、おうむ返しが得意なんですね。

カワイ 相手が言ったことを繰り返すのね。

ニケ そうです。山寺さんは忘年会で前髪クネ男の隣になって、そこで仲良くなったみたいです。年が明けたら、前髪クネ男はニケに話しかける回数が激減して、代わりに山寺さんに話し掛けるようになって、ニケは元上司の呪縛から解放されたのであります! 山寺さんは嫌がるそぶりもなくて、結構、前髪クネ男との会話を楽しんでるんですよね。