「時短でも100%頑張っている」と伝えよう

カワイ ただ単に、「勤務時間が短い」だけなのに、周囲に「ナニ様」と思わせてしまう人もいれば、腫れ物を扱うようにされてしまう人もいる。いい意味でも、悪い意味でも、特別な存在、になっちゃってることが、時短勤務がうまくいかない理由です。

 相談者の方は、「必要以上に気を遣われて」というけど、そりゃあ、これだけマタハラだの、長時間労働だの、育児と両立させろだの、言われりゃ気を遣いますよね。気を遣うな、っていうほうがムリな話かもしれませんね。

ニケ 私もめちゃ遣ってます! 本当は代理で会議なんて断りたかった。でも、やっぱり子育てって大変だろうなぁって思うから、「了解です!」と引き受けましたもん。

カワイ そうね。なので、「気遣われてイヤだな」と思うのではなく、「気を遣ってもらって、ありがたい」と思ったほうがいいですね。

 気を遣われるから、「頑張りづらい」という気持ちが分からなくもないけど、そこはちょっと違うと思いますよ。

 今まで通り頑張ればいいし、「そんなに頑張らなくていいよ~」って言われたら、「ありがとうございます! でも、私、時短勤務させていただいてるだけで、ものすごく感謝しているんです。短い時間しか働けませんが、その間だけは100%頑張ります! ありがとうございます!」って言えばいい。

ニケ うわぁ! それ、めちゃ好感度上がります! そういう人は200%応援します! 「気を遣わせてすみません」って言われるより、「気を遣ってくれてありがとう」って言われたほうがうれしいですもん!

カワイ あと「重要度の高い仕事は任せてもらえなくなった」って嘆いているけど……、う~ん、これは微妙な問題ですね。これって、社会の根っこにはびこっている問題でもあるから、難しいわね……。ニケさん、「ゼロ・トラック」って言葉、聞いたことある?

ニケ ゼロ・ドラッグですか? 麻薬撲滅運動かなんかですか?

カワイ ドラッグではなく、トラック。これは1990年代後半に、シリコンバレーで密かに流行った言葉なんだけど、「理想の社員」を表現するのに使われています。

 ゼロ・トラックとは、過大な業務を引き受け、緊急時の呼び出しにも応じ、どんなときでも対応できる人のこと。つまり、会社や上司の要求に「ノー」という言葉を絶対に言わない人を、「ゼロ・トラック」=摩擦が全くない人 と呼ぶようになった。だから、シリコンバレーには女性が少ないし、男性も、家庭のないシングルの人が多いの。

ニケ うわぁ~、スーパー社畜だ! でも、日本もそれに近くないですか? 女性活躍だの、ワークライフバランスとか、言ってますけど、理想は「ゼロ・トラック」。だから、マタハラとか起こるし、男の人も育児休暇とれないんですよ。だいたい、時短勤務だからって、重要度の低い仕事しかやらせないってことも、ゼロ・トラック信仰が根っこにあるからですよ。

カワイ す、すごい! ニケさん! 私が言いたかったこと、ぜ~んぶ言ってくれたわ!

ニケ テヘ。毎週、薫さんとやってるから、ニケも成長しました!