離婚が与える子どもへの影響は?

ニケ なんかダンナさんもお気の毒ですよね~。会社が倒産しなきゃ、こんなことにならなかったわけだし。でも、仕方がないか! カネがあったから、15歳も年下の若い奥さんもらえちゃったのかもしれないし。やっぱり、さっさと離婚したほうがいいですよ! 以上! ……ふ~っ……。

カワイ 問題はお子さんでしょうね。「11歳と1歳の子の今後」というのをどういう意味で相談者の方が使っているのか、いま一つ理解できないのだけど、親の離婚が子どもに与える影響は、心理学や社会学、医学の世界で、さまざまな調査研究が行われています。

 その、すべての研究で、いい結果は得られていない。つまり、離婚のネガティブな影響しか認められていないの。

ニケ ええ、そうなんですか? ニケの友だちは、元気ですよ。中学のときに親友の両親が離婚しちゃったんです。最初はよく泣いてたけど、週末だけお父さんのところに通うようになってからは元気でした。あ~、でも「早くオトナになりたい」っていうのは、いつも言ってたような気がする。やっぱりなんか悩んでたんですかね。

 ただ、本当にさっさとオトナになって、アメリカに留学して、そのまま向こうで就職してるから、それはそれで良かったように思いますけど。

カワイ 研究結果というのは、あくまでも「親の離婚を経験した子」と「経験しない子」で比較すると、「こんなことが起こりやすいよ~」って傾向でしかありません。なので、実際にはケースバイケース。親の離婚はすべてダメというわけじゃない。

 ただ、親が離婚すると、子の成績が低下したり、精神的不安定に陥ったり、たばこを吸うようになったり、オトナになってから脳卒中になったりするリスクが高まることが、いくつもの研究で確かめられています。

ニケ え~、脳卒中まで増加するんですか?

カワイ はい。カナダのトロント大学のE.F.トムソン教授らは、「親の離婚と息子の将来の脳卒中リスクは関連がある」という内容の論文を「International Journal of Stroke」という医学系のジャーナルに投稿しています。

 教授たちの研究によると、18歳になる前に親が離婚した男児は、離婚していない家庭で成長した男児より、成人になって脳卒中を発症する可能性が3倍高かったそうです。

 人種や収入、教育、喫煙などの成人の健康行動の影響を取り去っても、やはり「離婚と関係がある」という分析結果が出たと報告されています。

ニケ なんで、男だけなんですか?

カワイ 分かりません。

ニケ じゃあ、なんで親の影響が脳の病気にまで影響するんですか? しかも、大人になってからでしょ? なんで?

カワイ それも分かりません。これらはすべて統計的に分析した結果、「こういった傾向が認められました」「こういったリスクがありますよ」というものなの。理由やメカニズムを明らかにするには、もっともっと研究を積み重ねる必要があるのよ。ただね、親が離婚したことで子どもが感じるストレスが、なんらかの引き金になっているというのが、研究者の一致した意見です。

ニケ ふ~ん、つまり確率の問題なんですね。ストレスか~。

カワイ そうです。本当、ストレスって、便利な言葉よね。

 ストレスって思考停止ワードなんですよね。「親の離婚によるストレス」といっても、何がストレスの原因になっているかを見極めて対処しなけりゃ意味がないんだけどね。

 まぁ、それも結構難しいのだけど、少なくとも親はどんなストレス雨が子に降っているのかをおもんばかる必要がありますね。その上で子を守る傘を準備する。

 父親と会えなくて寂しがっている子だったら、「会える機会」という傘を準備すればいいし、「両親が離婚したのは自分のせいじゃないのか?」と思っている子だったら、「あなたは私たちにとって大切な人です」というメッセージを、父親も母親も送り続けてあげなきゃだし。何よりも親のストレスは子に伝染するから、親がストレス雨にならないように、キラキラ輝く生き方をしないとね。