「社畜」と「会社人間」は意味合いが違う

カワイ そういう人は「なんでオレがこんなにやってるのに、お礼の一つも言わないんだ!」とか、「私はあなたのために自分を犠牲にしてるのよ!」とか言ったりする。だったら、人のためにアレコレするのやめなよ、って感じなんですけどね。(笑)

ニケ ってことは、もし29歳総務さんが、「私はこんなに会社のため、みんなのために努力してるのに、先輩はそれを裏切った!」と思っているとしたら……、やっぱりそれは問題ですよね?

カワイ 「会社人間」って言葉知ってる?

ニケ 知ってますよ、社畜でしょ?

カワイ いいえ、違います。なぜ、高度成長期の日本のお父さんが「会社人間」と揶揄されるような働き方をしていたのか? なぜ、自分の働いている会社のために、時には自身や家族との生活をも犠牲にすることを厭わない生き方をしていたのか?

 それはそこに会社とのギブ&テイクの関係性が成立していたからです。会社は「アナタは大切な人です」というメッセージをちゃんと送ってました。それが「終身雇用と年功序列」です。

会社とギブ&テイクの関係があったから、「会社人間」として働いた (C) PIXTA
会社とギブ&テイクの関係があったから、「会社人間」として働いた (C) PIXTA

ニケ そっか。会社が働く人をすぐにリストラしたり、すぐに成果を出せなくても、「おんどりゃ、なにしてんだぁ~」なんて言わないで、ちゃんと賃金上げてくれていたから、働く人たちも「会社のために」って努力したのか……。

カワイ そうですよ。でもね、それだけじゃないの。会社が目指す方向と働く人が求めているものが一緒だったのよね。日本は敗戦国で貧乏だった。だから、日本全体が「豊かになりたい」って思っていました。会社も、働く人も、「もっと豊かになりたい」という価値観を共有できたから、お互いに大切にし合えたのよね。

ニケ ってことは……。転職しちゃった先輩は、会社と価値観が共有できなくなったから、転職しちゃったのかな?

カワイ ひょっとしたら、もともとやりたいことがあったのかもしれない。あるいは、自分の能力を他の会社で試してみたい、って思ったのかもしれない。詳しいことは、本人にしか分かりません。