古い価値観がまだまだ残っている

カワイ 山東さんに限らず70歳以上の方たちの中には、「女は子どもを産んでなんぼ」と考えている人は少なくありません。「女性にとって最も大切なことは、子どもを二人以上産むこと」と発言した校長先生もいましたよね。

 若い頃に刷り込まれた価値観を変えるのは難しいのよ。だから余計なことは言わないで黙っときゃいいのに、正義感でよかれと思って言ってしまうのでしょう。

ニケ 黙っときゃいいのに、って! 薫さ~ん、辛辣~(笑)。

カワイ 「結婚十訓」を知ってる世代なので、刷り込みは相当深い。

ニケ 結婚十訓? 「嫁は夫より早く起きろ~、嫁は夫より先に死ぬな~」ってヤツですか?

カワイ それは、さだまさしさんの「関白宣言」(笑)。

結婚十訓とは……。

一.一生の伴侶として信頼できる人を選びましょう

二.心身共に健康な人を選びましょう

三.お互いに健康証明書を交換しましょう

四.悪い遺伝のない人を選びましょう

五.近親結婚はなるべく避けましょう

六.なるべく早く結婚しましょう

七.迷信や因習に捉われないこと

八.父母長上の意見を尊重しなさい

九.式は質素に届けはすぐに

十.産めよ育てよ国のため

(※分かりやすくするために現代語に置き換えています)

ニケ うわあぁ~! 何ですか、これ!

カワイ 戦時中に政府から発表された「結婚十訓」です。国の労働力の確保のために、一人の女性が5人産むことを国の目標としていたの。

ニケ 政府が? 結婚と出産を指示するなんて。

「結婚」「出産」たるものを政府が指示するものではない (C) PIXTA
「結婚」「出産」たるものを政府が指示するものではない (C) PIXTA

カワイ 70年以上の月日がたっても政府は変わってないですよね。批判が殺到した「女性手帳」、若年層の恋愛調査の実施、婚活イベントへの財政支出、若年の新婚世帯の住宅支援など……すべてひっくるめて、「女性はさっさと結婚し、子どもを産み、仕事もしなさい! そのために婚活サポートもしますよ」ってことだもの。

ニケ 結婚十訓の現代版ですね!

カワイ 「4人出産表彰発言」の根っこには、戦争時の「お国のために」というプロパガンダが息づいている。時代は変わり、家族のカタチも、働くカタチも全く違うし、もう「お国のために子どもを産む」なんて考えている人はいないのにね。

 4人を産む「女性」を表彰するのではなく、「4人の子どもを持って育て上げたい」と自然と思える人が増える社会にするための施策が欲しい。ケア労働は必要な労働と評価し、男性も育児や家事を当たり前にやる社会。

ニケ そして、子どもがいてもいなくてもハッピーな社会! なんかニケ、やる気出てきました!

カワイ (笑)はい、頑張りましょう!

文/河合薫 写真/PIXTA

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