私たちの周りで置き去りにされている問題

 例えば、昨今のマタハラ問題。かなりデリケートな問題なので、一概には言えないのだが、現場の人たちから次のような意見を聞くことが多い。

 「妊娠が分かったら降格させられた、とか、出産後閑職に追いやられた、とマタハラの被害を訴える女性がいますけど……、周りから“ここにいてほしい”と思われる人は、出産しようと、子どもが病気で早退や遅刻をすることがあっても異動などさせられないし、周りも“お互い様”という気持ちになります。でも、こんなこと言うこと自体、マタハラって怒られるんでしょうけど……」

 ついつい私たちはなんらかの問題が起きると、人権、平等、といった誰も反論できない“伝家の宝刀”を持ち出し、拳を振り上げる。

 が、実際には「問題が起きる前の日常」の中にこそ問題が潜んでいる。

 青臭い言い方をすれば、平時をどれだけひたむきに生きているか? が大切なんじゃないか、と。

 もし、宮崎氏に、「ひたむきに育児休暇問題に取り組んできた」という事実があれば、もっともっと前向きに「国会議員の育児休暇」について社会の感心も高まったし、一般企業の男性たちの「育児休暇取得」にも追い風になった。たとえゲス不倫しようとも、新たな風が吹いたはずだ。

 あえて極論を言わせていただけば、不倫しようと、前髪チャラチャラ流そうと、目力を意識しようと関係ない。きちんと「議員」としての役目を、ひたむきに果たしてくれればそれでいい。そのひたむきさのない議員は、全員即刻バッジを取ってほしい。そんなことを半泣き記者会見を見ながら、思ってしまったのです。

Profile
河合薫
河合薫(かわい・かおる)
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークし、その数は600人に迫る。長岡技術科学大学、東京大学、早稲田大学など非常勤講師を歴任。日経ウーマンオンラインでは、連載「河合薫の女性のリアル人生相談」でもおなじみ。新刊「考える力を鍛える「穴あけ」勉強法: 難関資格・東大大学院も一発合格できた!」(草思社)を上梓、気象予報士や博士号の取得など、独学でキャリアを切り開いてきた際に実践していた思考法「穴あけ(=アナロジー)」を公開している。

文/河合薫