「だから女は……」と言われないために

 ただ、おそらく「女性に読んでほしくない女性のマネジメント」を読んで、「うんうん、そうだよね!」と密かに共感したオジさんたちも多いはずだ。

 だって、オジさんたちには、分からないから。どう考えても分からない。オジさん上司は、「ノー」と部下から言われたときの回答を、持ち合わせていない。これまで部下を、命令でしか動かしたことがなかったのだ。 

 分からないから、「だから女は……」と、つい女性のせいにしてしまうのだ。

 いずれにしても、「だから女は」とか、「女が○○だ」とレッテル貼られるのは、誰もが、あんまりいい気がしないはず。というか、件の三つの特徴の中には、ちょっとだけ気をつければ、そういったレッテル貼りをされずにすむ、「働く上での基本事項」もあるように思う。

 例えば、「あれができてない、これがよくない」と意見するのは評論家の仕事であって、同じ“職場の仲間同士”ですることじゃない。問題があると思うなら、改善策を提案する。あるいは、

 「問題だと思うのですが、自分ではいい改善策が浮かばないので、ちょっとみなさんで考える場を作ってもらえませんか?」

 と“私たちの問題”として提案すればいい。

 批判は物ゴトをいい方向にする礎になって、初めて意味を成す。ただただ石を投げるだけでは、もったない。せっかく「問題点」を見つけたのだから、一つひとつ丁寧に解決していくことが、自分が働きやすくなることであり、みんなも働きやすくなることだ。

 そして、もう一つ。「よく女性は泣く」と氏は書いているけど、私は生放送で泣いてしまったことがある。

 ラジオ番組のパーソナリティをやっていたときに、ゲストの女性文化人が、超フェミニストで。あまりに極端なことばかり言うので、ヘラヘラして場を和ませていた。そしたら突然、

 「アンタみたいなアホ女が、日本の男たちをのさばらせるのよ!」と激怒されて……。

 その途端、
 「ビ~ん、ヒックッヒック……びえ~ん」と、「オマエは幼稚園児か!」っていうくらい号泣してしまい……。局の電話がジャンジャン鳴り始めて……。

 「アホ女引っ込めろ!」っていう意見と、
 「薫、負けるな!オマエが正しい!」という意見と、
 批判・応援グチャグチャになった。

 プロデューサーはじめスタッフは、「こりゃあオイシイ!」とばかりに大喜びだったが、私は泣いてしまったことをすごく反省した。

 やっぱりスッチーになったときに、お客さんにクレームを言われ、泣いてしまったことがあって。そのとき先輩CAに「泣きたきゃトイレで泣きなさい!」とこっぴどく怒られ、ひどく落ち込んだ。

 職場では、いい大人が泣くと嫌がられる。相手には、「なぜ泣いた?」か分からないから、アレコレ関係ないことも言われてしまうし。でも、泣いちゃうこともあって、そのとき一番しんどいのは自分で。だから、やっぱり泣かないようにしなきゃだと思う。だって、私たちは十分過ぎるほど“いいオトナ”なのだから。

Profile
河合薫
河合薫(かわい・かおる)
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークし、その数は600人に迫る。長岡技術科学大学、東京大学、早稲田大学など非常勤講師を歴任。日経ウーマンオンラインでは、連載「河合薫の女性のリアル人生相談」でもおなじみ。新刊「考える力を鍛える「穴あけ」勉強法: 難関資格・東大大学院も一発合格できた!」(草思社)を上梓、気象予報士や博士号の取得など、独学でキャリアを切り開いてきた際に実践していた思考法「穴あけ(=アナロジー)」を公開している。

文/河合薫 写真/PIXTA