控えめながらも頼もしいリーダー・卓球の福原愛

 まず卓球女子の福原愛さん。今大会はシングルスで史上初のベスト4へ進出しました。そこまで1ゲームも落とさない戦いぶりには、個人のメダルさえ見えていました。しかし、メダルがかかった試合で苦しみます。シングルス準決勝・3位決定戦での連敗。さらに団体戦でも、準決勝は出場した試合をいずれも落とし、3位決定戦でもシングルスの試合は落とします。歓喜の団体戦・銅を獲得した直後にもかかわらず、「苦しい五輪でした」と涙を流す姿には胸が痛みました。

 選手としては振るわなかった大会もしれません。しかし、福原さんはリーダーとしてかつてない働きを見せました。15歳と若い伊藤美誠さんのダブルスパートナーとなり、試合中ずっと声を掛け続ける姿。そして、団体戦・準決勝で伊藤さんが「最終ゲーム、9対3の大幅リードからの大逆転負け」という手痛い1敗を喫したことを封印するように、「今日の負けの原因はすべて私にあります」と言い切った姿。そこには控えめながらも頼もしい、温かさがありました。

 自身が15歳で出場したアテネ五輪は、知名度から言っても、あらゆる期待・重圧が「天才卓球少女・愛ちゃん」に掛かってしまいました。誰よりもその難しさを知ればこそできるリーダーシップ。「愛ちゃん」はバンビの頃から、卓球への期待と重圧を背負ってここまで来ました。今大会は年齢面でも最年長となり、名実ともにリーダーとなった大会。選手としても、人間としても、看板としても、すべてを背負った大会でした。

 リーダーとしての福原愛は調和を重んじ、チームワークを何よりも大切にしていました。シングルスの3位決定戦に臨む際、北朝鮮のキム・ソンイと3回戦で対戦していた石川佳純さんから情報はもらわなかったと言います。それが石川さんの心の傷をえぐるから、です。もしそこでキム・ソンイの情報を得ていれば、個人の結果は変わっていたかもしれない。しかし、そうしなかった。チーム3人分の苦しさを引き受けることを、自分自身のことよりも上に置く、温かいリーダーでした。

 その一方で、強いリーダーもいました。シンクロナイズドスイミング代表を率いたヘッドコーチ(監督)の井村雅代さんです。