怖すぎる監督……でも、大本番においては心のよりどころに

 井村さんの強烈すぎるキャラクターと、厳しく課したトレーニングの数々。「死ぬ気でやれぃ!」と叱咤(しった)したあとに、「死んどらんやんか」と追い打ちをかけるスタイルには、ちょっと恐ろしさすら感じます。

 ただ、それは自身に掛かる重圧でもあります。選手を追い込み、指導を厳しくすれば、その結果責任は指導者にすべて跳ね返ってきます。「私の言うとおりにしろ、その代わり私がすべての責任を取る」――日常においては怖すぎる監督でも、大本番においては心のよりどころとなります。「監督にOKと言われた演技さえすれば大丈夫だ」と。

 シンクロは中国やスペイン、ウクライナなどの台頭もあって、ロンドン五輪ではメダルを逃すなど、苦戦が続いていました。今の選手たちには五輪のメダルを知る経験者はいません。その不安を打ち消し、大本番で実力を引き出すことができたのは、やはりあの監督あればこそ。重圧よりも監督のほうが怖い。めっちゃ怖い。プレッシャーをより大きなプレッシャーでねじ伏せる、厳しいリーダーでした。

 そして本稿の最後にご紹介するのが、レスリングの吉田沙保里さんです。