連載「河合薫の女性のリアル人生相談」でもおなじみの健康社会学者の河合薫さん。NHKの記者だった女性が過労死をした件について、私たちにも降りかかってくる可能性もある労働環境問題だと警鐘を鳴らします。河合さんの緊急寄稿をお届けします。

いつになったらこの国から「過労死」という言葉が消えるのか

 またもや尊い命が奪われました。

 いいえ、正確には「奪われていた」のです。

 NHKの記者だった女性(31歳)が4年前の2013年7月に長時間労働が原因で過労死。死因は心不全でした。

 NHK側の対応に不信感を抱いたご家族は、NHKにお嬢さんの死について社内での周知徹底と自発的な対外公表を要望。「NHKは娘の死のけじめをつけていない。このままでは娘の死が風化し、葬り去られる」との思いがあったそうです。

 2013年6月に行われた都議選と、7月の参議院選挙の最前線で取材活動を続けていた彼女は、参院選の投開票から3日後の7月24日に死亡。前日の23日は勤務終了後に送別会に参加(翌月から横浜放送局に異動予定)し、翌24日未明に都内の自宅に帰宅した後、倒れたと見られています。

 連絡がつかないことを不審に思った親しい友人が25日に自宅を訪れ、携帯電話を握った状態でベッドで倒れているのを発見。亡くなる前の一月の残業時間は159時間、その前の月も146時間で、深夜も休日もほとんど休むことなく働いていました。

 「忙しいしストレスもたまるし、1日に1回は仕事を辞めたいと思うけど踏ん張りどころだね」――。泣き言や弱音をめったに吐かない彼女から、両親に心配なメールが届いたのは一月前。

 「明るくいつも笑顔で、ヒマワリの花のような子でした」。亡くなったとき、携帯を握ったままだったのは、「自分に電話したかったのかもしれないと思うと、胸がえぐられる思い」とお母さんは悔しさをにじませ、「娘がいなくなり、体半分がもぎとられたような気持ち。心から笑える日は一生来ないと思う」と語っていました(朝日新聞10月5日朝刊より)。

ヒマワリの花のような子でした (C) PIXTA

 いったいいつになったらこの国から「過労死」という言葉が消えるのか。繰り返される報道に暗澹(あんたん)たる気持ちになります。過労死も過労自殺も、環境による死。過労死には長時間労働が直接的に影響し、過労自殺にはその引き金になります。