作者・武内直子さんの反応は?

 起用後、「セーラームーンが汚れる」といった声があったことについて浅沼氏は、「こうした声は、性感染症に対するイメージからきているのではないかと思う。我々は、どんな病気でも差別・偏見なく治療できるものは治療し、治療できないものは寄り添っていきたいと考え、啓発も行ってきたつもり。しかし、日本の性感染症に対するスティグマはまだまだ根深いものがあると感じた」と語ります。

 セーラームーンの原作者である武内直子氏は、薬剤師でもあり、普段から健康問題に関心を持っていたそう。今回の企画に賛同し、「いろいろな感染症が取り上げられるなかで、その対策は日頃から重要な問題であると考えており、今回このような機会を通じて、皆様のお役に立てることをうれしく思います」と語っています。さらに、「セーラームーンが今までのイメージを払拭し、セーラームーンの声がファンや皆様に理解され、検査に結びつくことで、多くの方がより健康に過ごせることを願っております」と話していることを思えば、セーラームーンファンは今回の起用を応援すべきといえるでしょう。

セーラームーンや性感染症の情報が印刷された、ハート型のコンドームパッケージ。性の健康医学財団が約6万個を作成しており、自治体などに配布したり、啓発イベントなどの機会に配布するという
セーラームーンや性感染症の情報が印刷された、ハート型のコンドームパッケージ。性の健康医学財団が約6万個を作成しており、自治体などに配布したり、啓発イベントなどの機会に配布するという

 また、浅沼氏らが特に心配したのが、キャッチコピーの「検査しないとおしおきよ!!」だったとか。「『おしおき』という言葉がいろいろ深読みされているようだが、これはセーラームーンの主人公の決めセリフ『月にかわっておしおきよ!』を由来とする言葉であり、それ自体に深い意図はない」(浅沼氏)。もともと厚労省側は「STI(性感染症)・HIVは早期発見・治療が大切です」というキャッチコピーを検討していたといいますが、原作者の武内氏の意見も踏まえ、現在のキャッチコピーが決まったそうです。武内氏が「性感染症の問題は非常にデリケートな問題であり、『検査しないとおしおきよ!!』の文言を提案した際の、厚生労働省担当者の『いいんですか!?』の驚きようは、まさにそれを表しておりました」と語っています。

 浅沼氏も、「心配はあったが、キャッチーでみんな知っているセリフ。話題にならなければ意味がないということで決断した」と言い、「こうした大胆な手段に打って出るほど、性感染症の増加は危機的な状況であるということを知ってほしい」と理解を求めます。