山尾志桜里と小池百合子―強い女たち

「小池百合子は、弱者であるときに力を発揮する政治家だと思います」
「小池百合子は、弱者であるときに力を発揮する政治家だと思います」

 山尾志桜里とは何回か会ったことがあるけれど、彼女は強者でいることで力を発揮するタイプ。数年前、民主党(現・民進党)が若手の人材を全面的に押し出そうとした時、ツートップが山尾志桜里と玉木雄一郎だった。当時、彼女はすごく勢いがあって、16年には「保育園落ちた日本死ね」というはてな匿名ダイアリー(匿名で日記を書くことができるネットのサービス)を国会で取り上げ、待機児童問題で安倍晋三首相を追求し、党内で存在感が増していった。だけど、不倫疑惑の渦中は目を覆うようなふらふらの状態で、弱くなった。今、衆院選で勝ってまたいい感じになってきている。

 当選後、不倫疑惑の相手、弁護士の倉持麟太郎を政策顧問として起用しまた物議を醸したが、オレ自身は、選挙に勝った時点でこの話は終わりだと思っている。起用は実務能力を買っているだけ、そもそもそんな説明をする必要はないと言い放ったところがすごくよかった。「失敗したけど、選挙に勝ったということは、受け入れてもらったんだからいいじゃない」ということだ。

 山尾志桜里とは逆に、弱者であるときに力を発揮する政治家が、小池百合子だ。

 彼女は、虐げられているときはたぐいまれな強さを発揮するんだけど、逆の立場に回ると弱くなる。それがまさに衆院選で出てしまった。

 2007年に女性初の防衛大臣に就任したときは偉そうに見えたが、約2カ月で任を離れた。その後、自民党では不遇のポジションがずっと続いて、2016年の東京都知事選挙に打って出た。元都知事の石原慎太郎に「大年増の厚化粧がいる」と言われたりして、あのときは「ゆりちゃんかわいそう」という世間の空気があった。

 選挙に勝って初登庁したときは、東京都議会(以下都議会)自民党幹部が挨拶に行った彼女と一緒に写真に写ることを拒否した。そうやって虐げられる姿を全部見せて、自分はにこにこしていた。そして、自民党が国民、都民を虐げている、「都議会のドン」と呼ばれていた都議会自民党・内田茂が牛耳っている既得権政治をなんとかしなくちゃいけないと、ぶち上げた。自分を弱者のポジションに置いて、今年7月の都議会議員選挙も圧勝した。そこまではすごくよかった。

 ところが、衆院選では、自身が立ち上げた希望の党への合流が決定した民進党議員のうち、政策や理念が合わない人たちを「排除」すると言ってしまった。小池百合子が強者に変わった瞬間だ。

 実は、その前から小池百合子の強者としての姿は見えつつあった。希望の党の結党記者会見のときのことだ。冒頭で流した動画には、男を従えさっそうと歩く彼女が映し出された。強い女のイメージだ。しかも、発表会に一人だけ後から入ってきて、その場にいた希望の党の議員たちがスタンディングオベーションをする様子がテレビで放映された。まさに「女帝」だ。「排除」発言はその2日後のこと。

 揚げ句の果てに、衆院選終了を待たずにパリに行っちゃって、ガラスの天井(性別や人種などを理由に昇進などが妨げられること)どころか鉄の天井があることを知った、というようなことを前駐日大使のキャロライン・ケネディの前で言い放った。要は「女だから日本では選挙に勝てなかった」と総括したわけだけど、違うでしょ。

 山尾志桜里と小池百合子の違いは、女だからとちやほやされる経験をしたか、していないかだと思う。小池百合子は男ばかりだった時代のメディアの世界で美人キャスターとして注目され、男だらけの日本新党から初出馬した。山尾志桜里の時代には、少ないとはいえ、小池百合子の初期時代と比べれば女性議員はそれなりの人数いただろうから、女だからといってちやほやされることはなかったと思う。