久美子さんが大塚家具に社長職として復職したのは2009年3月のこと。まず2年ほどかけて財務面の立て直しを行い、店舗の受付の運用を緩やかにするなど「ビジネスモデルの再編集」に着手。大塚家具を他の家具販売会社と差別化し、かつて大きな成功をもたらした会員制のビジネスモデルを一から見直すというものだ。それを過去の成功体験の否定と受け取った父である創業者から大きな反発を呼び、やがて世間の注目が集まる“騒動”にまで発展した。

“当たり前”を疑わなければ潮目を見逃す

 「部長職であっても、社長という立場になっても、常に“会社のために今何をするべきか”というスタンスで仕事をしてきました。そして、自分にとっての“当たり前”を疑い、最善の選択を探してきました」

 そもそも大塚家具の会員制ビジネスモデルとは、「良いものを安く売る」という目的をかなえるために編み出した策だった。

 「会員制を導入したのは1993年。当時は国内の家具メーカーから仕入れた商品に対して販売会社が自由に価格をつけることが、業界の慣行上、難しかったのです。そこで会員制を導入し、会員だけの特別価格であるとして、値段を安くしました。会員制ならばとメーカーの理解をある程度、得ることができたのですが、100%の理解は得られなかったので、そうしたしがらみのない海外の家具メーカーから商品を仕入れるようになります。それが顧客の人気を得て、非常にうまくいきました。さらに、会員制の店舗ならば純粋な商業施設ではない建物でも営業できるため、バブル崩壊直後の安い賃料で様々な場所に出店できるというメリットもありました」

 しかしそれから20年を経て、消費者のマインドの変化とともに、会員制モデルは時代に合わなくなってきたと久美子さんは実感する。

 「インターネットの普及で一般消費者は様々な情報を得て、自由に買い物ができるようになりました。さらに住宅市場の縮小で家具のまとめ買い需要も減っています。そんな社会状況のなか、“会員制の店舗は閉鎖的で入りにくく、店員にアテンドされながら店内を見るのも煩わしい”という理由からお客様の足が遠のいてしまったのです」

 2014年7月、社長を解任された後、2015年1月に再び社長に復帰した久美子さんは、同年10月に会員制を見直し、顧客との継続的な関係を築く新制度「IDCパートナーズ」を導入。来店客が任意で入会でき、ポイント機能なども拡充させている。

2月にリニューアルした新宿ショールームの1階。クッションなど気軽に買える商品を充実させた