詩織さん単独インタビュー「なんでも話せる社会に」

「我慢は他の人のためにならない」と語る伊藤さん
「我慢は他の人のためにならない」と語る伊藤さん

──詩織さんが告発したことを通してこれから変わるべきだと思ったことは何でしょうか。

詩織さん(以下、敬称略) いまだ変わらない暴行・脅迫要件や合意年齢などです。また、今、変化しつつありますが、まだ全都道府県に緊急センターが網羅されていないことなどシステムの中での不備は、まだまだたくさんあると思います。

──現在、「#MeToo」に注目が集まる一方、「女性活躍推進」も日本企業の重要課題と位置付けられるとされています。この光と影のような状況をどのようにご覧になっていますか。

詩織 そうですね。私の経験でしか話せないのですが、ハラスメントや暴力を受けた中で、それを話す先がない、十分対応できていない、そういう基本的な人権がない中でどうしたら女性は活躍できるのでしょうか。おそらく今まで日本社会で成功してきた女性は、多かれ少なかれいろいろなところで耐えてきたのだと思います。やはりきちんと助けを求められる環境や「おかしい」と言える環境がまず基本だと思います。

──それに対して希望的な観測はありますか。

詩織 あります。特に女性であればみんな、苦しい、生きづらいと思いつつも「小さなこと」と、セクハラにしても見て見ぬふりをしてきたけれど、最近はそのような声をたくさん聞くようになり、表面化される時代になりました。こういうことを話せるようになった、問題視できるようになったという点では変わってきたし、これからも変わるべきだと思います。

──詩織さんが勇気を持って告発できたのは、アメリカ生活の経験が一つの基盤になっていたのでしょうか。

詩織 日本では、声を上げると社会で生きていけなくなるという話をよく聞きます。私の場合は、これでもう、日本ではジャーナリストとして働けないと言われました。でも、ニューヨークに来て学んだこと、語学ができたことによって、「私には他の世界がある」と思うことができました。日本以外で生きていけるコミュニティがあることは大きなことでした。でも、本当は、誰もが『ここでできない(働けない)なら……』などと思わないで済む社会になってほしいです。「こんなことがあったから、じゃ、移住しよう」なんて、なかなかできないことですから。ただ、「他にも自分の居場所はある」、「助けてくれる人がいる」ことを知るだけでも、心の支えにはなると思います。そのことを若い人に知ってもらいたいです。

──読者層でもある20歳代以降の働く女性に向けてのメッセージをお願いします。

詩織 よく日本人は、我慢することがよい、自分さえ我慢すれば迷惑が掛からないと考えますが、それは他の人のためにはなりません。自分がそこで我慢してしまっては、もしかしたら、また同じことが繰り返されるかもしれないのです。だから、我慢というのは素晴らしいことではあっても、同時に、実はそれが誰のためにもならないこともあるのです。自分に正直になって、自分を信じることが一番だと思います。

 このように未来を見据えて、一言一言をかみしめて自らの思いを語ってくれた詩織さん。詩織さんは、現在、海外の映像メディアの仕事をしながら、性暴力の被害者へのインタビューも行い、今、大きな一歩を踏み出しています。