――ビートルズのメンバーを撮影した、とっておきの写真も今回展示されます。例えば「Paul,Ringo & John」というタイトルが付いた1枚は、ポール・マッカートニー、リンゴ・スター、ジョン・レノンの3人が屋外に置かれた椅子に靴を脱いで座り、気持ちよさそうにくつろいでいます。

 1968年にインド北部のヒマラヤの丘陵地帯にある聖地、リシケシで撮影した写真ですね。ビートルズの4人全員が2カ月間そこで過ごし、当時彼らが傾倒していたインド人の宗教家・マハリシ・ヨーギーに瞑想などを教わりました。静かで、穏やかで、邪魔するものが何もない最高の環境でした。4人がこんなに長い時間一緒にいられたのは、デビュー以来初めてのことでした。そのときのいい空気がそのまま写真に出ていると思います。リシケシに滞在していた間、彼らはとてもクリエーティブになり、「ホワイト・アルバム」2枚におさめられたすべての曲を書き上げたほどでした。

――ビートルズのメンバーの印象を教えてください。

 リンゴはいつでもみんなを笑わせて、みんなに愛される人。ポールはいつもすごくチャーミングな人。ジョンは、予想のつかないようなことを言うので、ちょっと怖いなと感じることもありました。ジョージは4人のなかで一番静か。そしてとてもすてきな人でした。

――あなたの写真のなかのロックスターたちは、とてもリラックスしていて自然です。もちろん、あなたが彼らの家族であったり、親しい友人であったりしたからこそと思いますが、撮影の際に気を付けていたことはありますか?

 枚数をたくさん撮影しないようにしていました。何回もシャッターを切ると、彼らが落ち着かない気持ちになるので。もともと私が写真を撮り始めたのは、モデル時代にボーイフレンドがカメラマンだったことから撮影に興味を持ち、自分でお金を貯めてカメラを買ったことがきっかけです。ジョージと暮らすようになった頃には、私の手元にはいつもカメラがあって、(一緒にいるロックスターたちにとって)私が彼らの写真を撮ることは日常的な、特別でないことでした。そのおかげで、彼らがカメラを意識していない、構えないカットが撮影できましたし、だからこそ、一度に撮影する枚数は本当に少しだけにしていました。

――なかでも写真が撮りやすい人はいましたか?

 エリック(・クラプトン)。私の撮影にいつも我慢強く付き合ってくれました。ただあるとき、私がポラロイドカメラで何度もアングルを変えてパシャパシャと彼を撮り続けていたら、さすがに切れられちゃったことがありました(笑)。いきなり私の手からカメラをガッとつかんで、ポイッと投げ捨てて、「もういいだろ」って。もちろん、その後にカメラを拾って私に戻してくれましたけれど。もちろんジョンも撮影しやすかったですよ。