――あなたの元夫である、ジョージ・ハリスンとエリック・クラプトンが二人でリビングのソファに膝と膝を突き合わせるように座って語り合っている写真も、今回の写真展で見ることができますね。

 1976年か77年くらいの写真かしら。彼らは本当にいい友達で、ジョージはエリックのことをとても尊敬していて、しょっちゅうお互いの家を行き来して熱心に話をしたり、ギターを二人で弾いたりしていました。この撮影のときに彼らが何の話をしていたかって? 分からないけれど、おそらくギターのことじゃないかしらね。

――エリック・クラプトンがあなたの前に現れたのは、あなたがジョージ・ハリスンと結婚して3~4年後くらいのとき。当時、ビートルズのメンバー同士の関係がぎくしゃくし始め、ジョージは家でも機嫌が悪く、あなたとの間にも暗雲が立ち込めていた。クラプトンは出会ってすぐにあなたに恋心を抱いたそうですね。あなたはそれに気づいていましたか?

 あるとき、自宅にいた私に、誰か分からない人から速達で手紙が来ました。小さな小さな字で、「君はすてきだ」とか「まだ夫のことを愛しているのか」とか「君の心のなかに僕はいるのか」などと書いてあって、最後に「愛をこめてeより」とあった。てっきり頭のおかしなファンからだろうと思っていたら、しばらくして、エリック(・クラプトン)から電話がかかってきて、「手紙を読んでくれた?」と聞かれたのです。それで初めてそれが彼からのラブレターだと気付きました。本当に小さな字で書かれた手紙で。しかも、紙はこれくらい(手前にあったA3用紙を指して)の大きさがあったのに、手紙はその片隅のこれくらい小さな面積(文庫本くらいのサイズを両手で作って)に書かれていて。署名もよく見ないと気付かないような、すごく小さな「e」でした。

――なぜ、エリック・クラプトンは、そんな小さな字であなたにラブレターを書いたんでしょうか?

 理由は聞いていないけれど、罪の意識を少し感じていたから、後ろめたい気持ちがあったからかもしれません。私にこんな手紙を書いてはいけない、堂々とできることではない、秘密にしなくてはならないことだ……そんな心理が小さな字に表れたのではないかしら。憶測に過ぎませんが。

――エリック・クラプトンは当時既にそのギター・プレーで「神」とまで称され、たくさんのミュージシャンの尊敬を集めていました。しかもハンサムで、セクシー。そんな人から情熱的なラブレターを受け取って、あなたの心も動いたのですね?

 でも、ジョージと結婚していたから、単純にうれしいとは思えなくて。当時ジョージとの関係はうまくいっていなかったけれど、すぐにエリックの所に行くとは決められなかった。「あなたの気持ちには応えられない、準備がまだ整っていない」と答えました。

――その返答によって、生まれた曲が「いとしのレイラ」。自分以外の恋人がいる相手に、ひざまずいて愛を乞う熱烈なラブソングです。初めて聴いたとき、どう感じましたか?

 本当に情熱的で、美しい歌で、歌詞には切羽詰まった感情がいっぱいで、私は絶望的な気持ちになりました。私にイエスと言ってほしいという必死な気持ちが伝わってきて。同時に、どうしよう、この歌はあまりにもあからさまに私とエリックとのことで、これが公になっちゃうなんてどうしましょうって、ものすごく戸惑う気持ちもありました(苦笑)。

「『いとしのレイラ』の歌詞には切羽詰まった感情がいっぱいで、絶望的な気持ちになりました」
「『いとしのレイラ』の歌詞には切羽詰まった感情がいっぱいで、絶望的な気持ちになりました」