増田 極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が第2党にのし上がったと聞きましたが、監督はそのことをどのように受け止めていますか?

アキン もちろん心配はしています。フランスでもイタリアでもなく、ドイツのことなので。ドイツには極右、ファシズムという思想を持った独自の歴史があるため、他の国より意味合いが深くなります。今、起きていることをしっかりと追って、インタビュー記事なども読むようにしています。記事を読むと、そういった思想を持つ人たちがどのようにして世界の中心にまで進出しているのか、少し理解できるような気がします。法についてよく知る教養の高い人たちが、自分たちの思想を上手に言葉で説明しているインタビューを読むと、彼らの思想を広める方法が少し分かるんですよね。

全てのことは恐怖心から来ている

増田 その上で、テロを防ぐためにはどうしたらいいと思いますか?

アキン その答えを持っていたら国連に直行します(笑)。ただ思うに、全てのことが恐怖心から来ている気がします。恐れる心というものが今、世界を席巻している。グローバル化への恐怖心がトランプを大統領にし、移民・難民への恐怖心がAfDを第2党に押し上げたのではないでしょうか。僕自身は、子どもが学校の他の子どもたちに恐怖心を抱いたら、話をします。もしも助けになるなら、相手の子どもにも話しに行くし、その子の親とも話します。それが僕のパーソナルな形での解決方法です。対話をすることで恐怖心は取り除けると思います。

増田 このウェブサイトの読者は女性たちなのですが、彼女たちにこの映画のどこに注目してほしいですか?

アキン 本作のカティヤは、サムライが女性になったようなキャラクターなんです。サムライのタトゥーを入れて、武士道のような道を歩んでいます。カティヤは夫と子どもを永遠に愛し続けるし、忠誠心を持ち続けるという象徴としてタトゥーを入れています。その母親の物語に注目してほしいです。

「対話をすることで恐怖心は取り除ける」というアキン監督(右)と増田さん
「対話をすることで恐怖心は取り除ける」というアキン監督(右)と増田さん
【作品情報】
「女は二度決断する」
4月14日(土)より公開中
(C) 2017 bombero international GmbH & Co. KG, Macassar Productions, Pathé Production,corazón international GmbH & Co. KG,Warner Bros. Entertainment GmbH

監督・脚本:ファティ・アキン
提供:ビターズ・エンド、WOWOW 配給:ビターズ・エンド
公式サイト:http://www.bitters.co.jp/ketsudan

聞き手・文/清水久美子 撮影/小野さやか