「通訳者には向いていない」と実感

 得意な英語を生かせる仕事は刺激的ではあったが、ここでも「自分の不得手」にぶつかる。

 「英語のニュースを読むアナウンス技術については評価されたのですが、“日本語のニュースを英訳する”という仕事がぜんぜんダメでした。帰国子女だったので、当時は日本のことがあまりよく分からない。日本のことをよく分かっていない人が、短い時間で日本語を英語に訳すというのは非常に難しいんです。これではいけないと思って、仕事の傍ら同時通訳の学校に入りました。同時通訳者になりたかったわけではなく、日本語の勉強をするにはいい方法だと思ったのです」

 しかし1年半ほど通って、「自分は同時通訳者には向いていない」と痛感した。

 「通訳が上手な人は、言われた言葉をどんどん英語に言い換えていくことができるんです。でも私は、言われたことの意味を深く考えてしまうタイプ。“さっきの話と矛盾しているのでは?”とか…。右から左に流せなくて、次の言葉が聞こえなくなってしまう。どうしても内容にこだわってしまう自分がいて、内容がよく分からないことはうまく訳せない。できないことが、すごく苦しかったです」

 英語ニュースの仕事を通じて、「“日本のことをよく知らない外国人に向けて日本のことを伝える”という経験は、その後のキャスターの仕事で、“どんなテーマでも分かりやすく伝える”という訓練になったと思います」。

 また、日本へ取材に来る外国人ジャーナリストの通訳をするなかで、取材先候補のリサーチや撮影場所探し(いわゆるロケハン)の仕事を引き受けることもあった。「彼らの取材やインタビューの手法、興味や関心の持ち方、記事のまとめ方などは非常に参考になり、結果として今の仕事に生きています」。

 一方で、「仕事で輝きたい」というキャリア志向は相変わらずなかった。そのため20代も終わりを迎える頃、これらの仕事をすべて手放してしまうことになる。

文/藤川明日香(日経WOMAN編集部) 写真/洞澤佐智子

こちらの記事は日経WOMAN5月号「旬な人」の国谷裕子さんのインタビューを大幅に加筆したもので、全5回シリーズで公開しています。
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