目に涙を浮かべて謝る女性たちも
身近な働く女性たちの声に気づかされることもあった。
「NHKの番組制作の第一線で活躍して産休・育休に入り、職場復帰した女性に局内でバッタリ会ったとき。“久しぶり!”と声を掛けると、“活躍できていなくて、すみません”と、自分のふがいなさを語るんです。出産前のように長時間働けず、自分は職場の重荷になっている、迷惑をかけている、育児も中途半端、と、罪悪感までも口にするのです。私みたいに長時間労働をいとわず働き続ける悪いロールモデルがいるから、男性中心の働き方に合わせるということにしか考えが及ばないのかもしれない。こんなふうに自分を責める女性を増やしてはいけない、と痛感しました」
番組で女性の働き方の問題に焦点を当てることによって、NHKでも女性の働き方を支援するための仕組みが整ってきたという。育休や時短勤務を長く取った女性が、一度は諦めていた管理職に昇進するといった事例も、一連のムーブメントのなかで生まれている。
『クローズアップ現代』のキャスターを退任した今、働く女性の応援につながることにも関わっていきたい、と語る。
「時代と真正面から向き合える仕事をしている」という喜びをかみしめながら、30代から50代までを仕事一筋で生きてきた国谷さん。世の中から見れば悪いロールモデルでも、私はこの仕事に全力投球し続けなければ気が済まなかった――そんな達成感を抱いているように見える。
「自分にとっての正解」を信じて突き進んできた人の、セカンドステージが始まる。
取材・文/藤川明日香(日経WOMAN編集部) 写真/洞澤佐智子
こちらの記事は日経WOMAN5月号「旬な人」の国谷裕子さんのインタビューを大幅に加筆したもので、全5回シリーズで公開しています。
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