日本に隠れている、女性という資産をもっと活用できれば、この国の力になる。発表当時、国内では注目されなかった「ウーマノミクス」は、20年たってようやく、成果を挙げてきています。一方で、働く日本人女性の比率は、実はアメリカの水準を超えていますが、決定権を持つ女性リーダーはいまだ少ないのが現実です。

 経済も社会も転換期にあり、成長が厳しい現代においては、同じような考えの人ばかりでは企業の発展も見込めません。だから、女性の力は今以上に必要となる。女性はもっと自信を持ってほしい。そして、責任ある立場にも、恐れずに挑戦してほしいのです。

 あるポストに就くのに10のスキルが必要な場合、男性は「3つできるから自分は適任だ」と言います。でも女性は、「9つしかできないからまだ早い」と思いがち。女性が自分からも周りからも過小評価されるのは世界共通です。

 女性の活躍には、育児や介護の支援制度の充実、「洗剤のCMに出るのは女性」というような世間の固定観念を変えることと同時に、女性自身の意識改革も不可欠です。そのために、組織や職場に必要なのは、「10のうち、1番重要なことが2つできていれば大丈夫だよ」と背中を押してくれる存在。そういうメンター的な存在がいれば、もっと自信を持って仕事に取り組める。私もそうでした。

 後輩や部下がいる人にはぜひ、誰かのメンターになってほしいと思います。そして企業や組織には、女性が第1子を出産するまでに活躍できるチャンスを与えてほしい。仕事にやりがいを感じると出産後に復職する傾向が高く、働く女性が多い県ほど出生率が高いというデータもあります。つまり、女性の活躍が少子化問題の解決にもなるのです。

次世代に何をつないでいけるのかを考えていきたい (C)PIXTA
次世代に何をつないでいけるのかを考えていきたい (C)PIXTA

 2人の子供も成長し、仕事以上に難しかった親としての仕事も一段落した今、改めて感じるのは、人は社会の中で生きているということ。自分は育ててくれた社会に何を返して、次世代に何をつないでいけるのか。愛する日本の構造問題や女性の活躍について、手伝えることがあればこれからも挑戦したいと思っています。

取材・文/松田亜子

日経ウーマン2018年5月号掲載記事を転載
この記事は雑誌記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります

プロフィール
Kathy Matsui
Kathy Matsui
1965年アメリカ生まれ。ハーバード大学卒業、ジョンズ・ホプキンズ大学大学院修了。90年にバークレイズ証券、94年ゴールドマン・サックス証券入社。99年「ウーマノミクス」という新しい概念でレポートを発表。『インスティテューショナル・インベスター』誌日本株式投資戦略部門アナリストランキングで1位を獲得。2015年から副会長となり、チーフ日本株ストラテジストとして活躍する一方、アジア女子大学の理事会メンバーも務める。1男1女の母。
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