骨壺に対する意外なニーズとは

 2014年にCOVERに出向すると、布施さんは早速、フューネラル(葬儀葬祭)業界進出に向け、市場調査を始めた。すると、昔ながらの古い体質が残る業界ではあるものの、高齢化が進む中、亡くなる人も増えているため、他業種からの新規参入も相次いでおり、業界全体が大きな変化の時期に差し掛かっていることを肌で感じることができたという。

 埋葬方法も従来のようなお墓だけではなく、納骨堂や樹木葬、散骨など多様化してきており、そこに新たなニーズも生まれてきている。その一つが「分骨したお骨を納め、手元供養をするための骨壺が欲しい」というものだった。お墓が遠くて頻繁にお参りに行けない、樹木葬や散骨などによりそもそもお墓を作っていない、などの理由で、親しい人のお骨を一部でも手元に置いておきたいという要望が増えてきたのだ。

 「今は仏壇のある家も少なくなってきています。リビングに遺影だけが飾ってあったりする場合もありますが、もう少しさりげなくインテリアになじむような形のもので、手を合わせたり、故人を思い出したりできるようななにかがあればいいのでは、と考えていました」。そこで、分骨したお骨を納めてリビングに置いても違和感のない小ぶりで美しい骨壺を企画した。骨壺の中には、お骨のほか、指輪や時計などの遺品や、写真を納めることもできる。

 分骨したお骨を手元に置くことにこだわる理由は、布施さん自身が子どもを持つ母であることも関わっている。「お子さんを亡くされた親御さんは『なるべく手元に置いておきたい。納骨したくない』とおっしゃるケースが多いのです。それならば、お骨をきれいな入れ物に納めて身近に置いておけたらいいのでは、と考えました」