“終活”をするのはほぼ女性!?

 こうして生み出された美しい骨壺を、フューネラル(葬儀葬祭)業界の展示会であるエンディング産業展に出展すると、次々と女性たちがブースに訪れ、「こんな骨壺が欲しかった」「ぜひ自分の娘に持っていてほしい」など、大きな反響があったという。

 布施さんは、“エンディングファイル”もプロデュースしている。死に備えて自分の希望などを書き込む「エンディングノート」もいろいろ試したのですが、銀行通帳やら住所録などをあれこれ書き込むのは結構大変ですし、書き終えても、情報をどんどん更新していかなくてはならず、手間がかかります。そこで、私はファイル形式のエンディングノートを考案しました。これならば、その都度、重要なものをファイルに入れておけばいいので、手軽に管理することができます」

 骨壺、エンディングファイルなどの企画を通して、布施さんはあることに気づいた。「興味を持ってくださる方は女性ばかりなのです。エンディングノートの書き方講座に集まるのも100%女性ですし、分骨を希望する人もほとんどが女性です。どうも、死生観には男女差があるようで、男性は『死ぬことについて考えたくない』という人がほとんど。お葬式やお墓など、自分の死後のことまで現実的に考えて終活をするのはほぼ女性なのです」

次に目指すのは、キャラクター葬

 布施さんは、女性こそがフューネラル(葬儀葬祭)業界を変えていけるのではないかと考えている。「たとえば、以前は結婚式の祝儀袋はのしと水引のついた正統派のものばかりでしたが、この10年ほどで、ディズニーなどのキャラクターものやスタイリッシュなものなど、様々なデザインのものが増えていき、いつのまにか受け入れられるようになってきました。それを考えると、いずれは不祝儀袋もデザイン的なものやキャラクターものが出てきてもいいのではないでしょうか。このような発想をフューネラル業界に持ち込めるのは、男性よりも、葬儀を現実的に考えることができる女性の方が得意ではないかと思います」

 布施さんの次なる挑戦は、キャラクターのついた骨壺だ。「ネットでキーワード検索してみるとわかるのですが、幼い子どもを亡くされたお母さんは、子どもが好きだったキャラクターの骨壺を探しています。しかし、キャラクター業界ではまだフューネラルまわりの商品は忌避されているため、商品化は難しい。ですが、子どもが好きだったキャラクターのついた骨壺に入れてあげたい、と願う親心は真剣で切実なものです。実は今、1社ですが、キャラクターの会社からご協力いただき、夏にはキャラクター骨壺を出す予定でいます。私はそれをきっかけに、多くの会社から賛同いただいて、さまざまなキャラクター骨壺を世に送り出せたら、と考えています」

 最終的には、自分の好きな“キャラクター葬”ができるような世界を実現することが、布施さんの夢だという。「今年の初めに樹木希林さんを起用した宝島社の広告に、『死ぬときくらい自由にさせてよ』というキャッチコピーがありましたが、まさにその通り。亡くなる人も送る人も満足できるようなエンディングを提案していきたいです」

 「誰にでも死は訪れる。自分の葬儀を考えることは、生きることを考えることにもつながります。死を考えることを恐れないで」と話す布施さん。常に死を考え準備している必要はないが、時には、自分がどんな風に送られたいかを思い浮かべ、そこからどんな人生を生きたいのかを考えてみる…。美しい骨壺を眺めながら、そんな時間をもってみることもまた、よりよく生きることにつながるのかもしれない。

文/井上佐保子 写真/鈴木愛子

布施美佳子(ふせ・みかこ)

COVER クリエイティブプロデューサー。アパレルメーカーを経て、1999年にバンダイに入社。アパレル事業部でガールズブリーフ「mi・ke・ra」などをヒットさせる。2014年にCOVERに出向し、仮装アイテム「かぶるかみぶくろ」などを企画した後、フューネラルグッズブランド「GRAVE TOKYO」を立ち上げる。「GRAVE TOKYO」は2015年末の「エンディング産業展」に出展、注目を集める。