恋愛や結婚以前に大事なのは、自分の足で立つこと
さらにこの頃、結婚を約束していた彼に振られたことも、デビューを決意するきっかけとなった。
「私は恋愛にのめり込むタイプで、当時は結婚して家庭を作りたいという気持ちに傾いていたんです。でも、振られてしまって気づいたのは、人は結局、パートナーがいてもいなくても、自分の足で立っていなければならないということ。“この人がいないと生きていけない”という状態ではなく、まずは自分がひとりでしっかり立って、その状態で好きな人がいるというのが理想だなと思ったんです。甘えた考えから脱して、自分の足で立つために、デビューさせてもらう決意をしました」
2016年1月にメジャーデビュー。ラジオやテレビで『YAMABIKO』が流れる機会が増えると、予想外のところからも反響が寄せられるようになった。
「最初は同年代の働く人から共感されることが多かったのですが、そのうち中学生や小学生にまで響いているという声が届き始めたんです。『鬱だった受験生の娘が、あなたの歌を聴いてから変わり始めた』『小学生の息子に聴かせたら、それから毎日のように聴いていて、授業参観でもらった手紙にあなたの歌詞が書いてあった』――そんなお便りをもらうようになって。大人だけでなく、もっともっと若い人にまで“頑張ろう”と思ってもらえる曲を届けられたことがすごくうれしいし、身の引き締まる思いです」
数々の職業を経て、多くの人を歌で支える立場になったNakamuraEmiさんが今、人生で悩んでいる人にアドバイスすることは? と問うと、こんな答えが返ってきた。
「私のようにさんざん悩んできた人間が言うのもおこがましいけれど、“自分の身に降りかかるすべての出来事は、自分のために起こっている”と思えるといいのかな。かつて経験した問題が再び起こったりしたら、“あ、私あのときにこの問題をちゃんと解決しなかったから、また起こったんだ”と思う。ちゃんと解決すると、一歩前に進める。最近はそんなふうに感じています」
普通に働き、普通に人間関係に悩み、普通に恋愛をして、その厳しさを味わいながらも一歩ずつ前進し、“昨日よりも輝く自分”を目指す。そんな等身大の女性の強い言葉に支えられて、私たちはきっと「明日も頑張ろう」と思って生きていけるはずだ。
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文/藤川明日香(日経WOMAN編集部) 写真/洞澤佐智子
こちらの記事は日経WOMAN6月号「旬な人」のNakamuraEmiさんのインタビューを大幅に加筆したもので、
全2回シリーズで公開しています。