全ての人の知能をロボットに加えたい

 さらにこのプロジェクトは、お年寄りのためだけでなく、エンジニアや開発者のためにもなるんです。

 やっぱり東京を中心とした開発現場は、社会課題に遠い環境だと思います。

 都会のオフィスの中でほとんどの時間を過ごす人たちは、地方のお年寄りたちがどんな生活をしているのか、分からないですよね。もしかしたら、自分の家族のことですら、どんな課題に直面しているか知らないかもしれない。

 このように、これからどんどんコミュニティの断絶が起きていくと思います。

 ITの製品を生み出している人々もそうです。現場から断絶された狭いなかで、「こうあるべき」と議論をして、ニーズを予想しながら技術が作られていく。例えば、人間が100人いるとしたら、そのなかで技術の分かる3人分ぐらいの知能で、製品が作られていってしまうと思っています。

 だから私は、100人全員分の知能をロボット開発に加えたくて、今の活動を行っています。

 会社で「何のために目の前の仕事をしているのか?」ということを考えずに働いているエンジニアが現場に来る。すると、自分が持っている技術がどういう人たちのために活かされているのか分かり、現場の声を取り入れることができる。

 そうやって、自分の会社のリソースを使えば社会のためになるし、世界を変えていくことだってできるんだということを、エンジニア側に啓蒙する活動にもなっています。