「働いてほしいけど、家事もきちんとこなしてほしい」の身勝手

瀬地山 どちらか一方が稼ぎ手になるのは、精神的な負担や不満を呼び起こすのはもちろんですが、やはり一番には家計のリスクがありますよね。

 高度成長期で日本経済が年率10%で急成長していた時代は、男性の稼ぎだけで一家を養う「一頭立て馬車体制」が機能していました。でも、少子高齢化が進み、経済の急成長が望めない今、夫婦で共に働く「二頭立て」でないと厳しいものがあります。

 そのことを若い世代はよく分かっているようで、20~30代の独身者を対象とした調査によると(『第14回出生動向基本調査』2010年)、「(妻に)専業主婦になってほしいと思う」と答えた男性は10.9%、「専業主婦になれると思う」と答えた女性もわずか9.1%でした。

hitomi 若い独身男性の9割は「妻に働いてほしい」と思っていて、若い独身女性の9割も「働かなきゃいけない」と思っているということですね。お互いの思いは一致しているように感じますが。

瀬地山 ですよね。実は同じ調査で結婚相手の条件を聞いています。若い独身男性が結婚相手に求めるものとして、断トツは「人柄」なんですが、それは「相性」ともいうべき定義がしにくいものになりますので、ひとまずそれ抜きで考えると、1位は「家事の能力」、2位は「仕事への理解」、3位は「容姿」だったんですね。一方、女性の側はといえば、同じくトップは「人柄」ですが、それを除いて考えると、1位は「家事の能力」、2位は「経済力」、3位は「仕事への理解」だったんです。

 お互いに「家事の能力」や「仕事への理解」を求めているのは一致しています。

hitomi でも、ちょっと待ってください! 男性は「妻に働いてほしい」と思っているのに、「家事の能力」も求めているってことですよね。これはムシがよすぎる気が…(笑)。

瀬地山 そうなんです。女性は自分も働くのだから、夫に家事の能力を求めるのはいいにしても、男性は妻には働いてほしい上に、家事もきちんとこなしてほしいと望んでいるわけです。男性側は女性に二重の負担を要求しているので、これは身勝手な考え方じゃないかと思うんですね。

hitomi 私のブログ読者から、「気がついたら夫の収入より自分の収入のほうが多くなっているのに、家事も育児もほぼ自分が引き受けている状態で不満が募っています。結婚している意味が分からなくなりそう」との声をいただきまして。実はこうしたケースは結構あるんじゃないかと思うんですね。でも、先生は家事や育児も積極的にされているのですよね。