『貧血大国・日本 放置されてきた国民病の原因と対策』(光文社新書)が話題になっている。著者は社会人2年目、弱冠27歳の医師・山本佳奈さん。産婦人科医を目指す中、大学在学時に貧血が妊婦に及ぼす大きな問題を知ったことをきっかけに、貧血をテーマにした研究を始めた。現在は研修医として、福島県の南相馬市立総合病院に勤務する。山本さんは、同病院の初の女性研修医。なぜこの病院を選んだのかをはじめご自身のキャリアについて伺った。

前編の記事はこちら → ダイエットで20キロ台に…貧血に警鐘を鳴らす女医

関西の実家から福島県南相馬市へ

山本佳奈(やまもと・かな)
1989年滋賀県生まれ。医師。私立四天王寺中学・高等学校卒業。2013年3月、滋賀医科大学卒業、医師免許取得。同年4月より福島県の南相馬市立総合病院に勤務。大学時代から、医学博士・上昌広氏の下で貧血を中心に医療全般について研究している。

 本の執筆の話が舞い込んだ頃、私はちょうど、卒業後の研修病院の選定で迷いに迷っていました。関西にも病院はたくさんありますが、文化圏が違う東京で働きたいと思っていたのです。

 ところが、考えているうちに「地元でいいかな、実家に近いと色々と楽だしな」などという新たな迷いも出てきて。最初は東京の病院5カ所に履歴書を送ったのですが、そのうち4院については試験や面接の前に電話で審査を断ってしまいました。

 残りの1院は「東京ならここがいい」と特に思っていた病院で、倍率は8、9倍とかなり高かったのですが、受かるんじゃないか、と心のどこかで思っていたところがありました。ところが、落ちてしまったんです。

 そうこうしているうちに、どんどん他の病院の受け入れ枠が埋まり募集が締め切られていきました。焦りを覚えるなか、南相馬市立総合病院で1つ受け入れ枠が空いている、という情報が舞い込みました。「ここを受けよう」――。情報を聞いた私は、すぐに心を決めたのです。

 南相馬市は福島第一原子力発電所から20キロ圏内の地域などが含まれ、そうした地域には避難指示も出されていた場所です(7月12日には帰宅困難区域を除きすべて解除)。実は、私は大学5年生の11月、南相馬市立総合病院を訪れていました。何度も南相馬でボランティア活動をしていた友人が誘ってくれたのです。

 病院では、東日本大震災の後も現地に残り医療を続けていらした先生方に感銘を受けました。ただ、そのときはこの病院に研修医として戻ってくるとは思っていませんでした。町を少し周ってみましたが、当時はコンビニも閉まったままで、除染土が入ったフレコンバッグがたくさん積んである。また、1階部分がごっそり津波にのまれた建物や、玄関にフェンスが張り巡らされている家々を目の当たりにして、ショックを受けました。