忙しい中でのストレスとの付き合い方

「プレゼンのために万全を期すから、捨てる企画を作ることになる」(中川さん)
「プレゼンのために万全を期すから、捨てる企画を作ることになる」(中川さん)

中川:でも僕なんかは最近では、飲料会社に押しかけPRプレゼンしたんですが、「酒文化を守る会」っていうブログを作りましょう、って企画書を1案だけ、1時間で書いて持って行ってしまう。それで決まらないならいいやと。三つ持参しないと形がつかないというだけのことで、実際には捨てる企画をわざわざ作るのは無駄ですよね。会社員の時も「1案主義」だったと思います。

おかざき:中川さんの場合は、自分の脳みそで決定できるポジションだったというのもあるかもしれない。決定する脳みそが自分じゃないときにいろいろ生じるんですよね。決定権がないから、決めるのは自分じゃなくて上の人だから、その人のために複数案を用意していく必要ができてしまう。

中川:背負っているものが違うというのはあるかもしれない。僕の部署は僕とあと一人くらいだったけれど、CM制作は多くの人の生活が懸かっているし、クライアントも多くの選択肢の中からいいものを選びたいし。プレゼンのために万全を期すから、そういう作業が生じるんですよね。

――そういうときのストレス、すごそうですね。どうやってやり過ごされるんですか。

中川:僕のいたCC局の仕事というのは小口ですから、制作のように広告費が5000万の案件なんかに比べると「弱者」なんですよ。でも、例えば僕の書いたプレスリリースが新聞に取り上げられた、みたいな結果が出たとき、実質的には20万円や80万円の仕事でも、「8000万円分の広告効果を生み出すことができた!」なんて自分たちでインチキ算出して、営業が褒めてくれるとそれで十分にうれしい。ストレスっていうのは、自分が決定できないことで板挟みになって両方から叱られると発生するものですよね。例えば取材対象と編集者の板挟みであるとか。でも結果が出せれば、それで解消していましたね。

おかざき:私はストレスをずっと抱えていましたね。でももともと許容量が小さいから、たまらないんですよ。ちょっとストレスがあっても、別のが来れば一つ抜けてしまう、みたいな。私も博報堂にいる間はずっと怒っていましたけれど、会社にいながら漫画を描いていましたから、ストレスの原因は一つじゃないし。ストレスは共存するもの……小さいストレスだったら、ためずに付き合える。