女子の就活は“熟れごろベンチャー”が狙い目

白河 私は女子大生たちに「ナンバーワン企業には行くな」とよく言います。ナンバーワン企業に行くと、時間を死ぬほど投入できる優秀な男の人たちと競わないといけない。女性は、いずれは結婚や子育てなどがあって絶対不利になるじゃないですか。だから行かないほうがいいよって。

 これは私の持論なのですが、やはり女性が活躍できるのは、女性の意見を求められる商品をメインにしている会社か、「あいつがいないと困る」といわれるような“スキル系の仕事”ですよね。ちなみに、私はシステムエンジニアとしてスキル系でキャリアをスタートしました。

白河 日本の伝統的な企業は「政府に言われたから、仕方なく女性活躍推進に取り組む」というスタンスのところが多くて……。見せかけの活躍推進は迷惑だからやめてくださいって、いつも言っているんです。ボルテージのいいところは、女性がいないと本当に困る会社で、本気で取り組んでいるところです。

 そう言っていただけるとうれしいです。出産後10カ月未満で復帰した場合、月給の2カ月分を支給する支援制度や、子どもの入園式や保護者会などに有給で参加できるチャイルドサポート休暇など、いろいろと試行錯誤してきています。小学校の行事は平日が多いので。

白河 必要に迫られてこその発想ですよね。

 でも5年くらい前だったか。私としては上場したのでやっと、との思いで母校の津田塾大学の就職課を訪ね、会社の説明をして「卒業生をぜひ」と言ったときに、「大企業じゃないんですよね」という反応が返ってきたことがあります。このときは空しかったのですが、これが一般的な評価基準だと改めて悟りました。

白河 私はむしろ“熟れごろベンチャー”が狙い目、と女子大生には言っていますよ。

 “熟れごろ”ですか……!?

白河 IT企業はほぼ同じ時期に起ち上がっていますよね。

 はい。90年代後半から2000年ころにかけてです。

白河 ベンチャーは社内に年齢の高い人がそれほどいなくて、わりと柔軟に会社を変えられる。サイボウズや楽天を見てもそうです。創業期から頑張ってきた女性たちがちょうど子育て期に入って、働き方を転換せざるをえない会社がいいよ、と言っているんです。

 ボルテージが、いままさにそうです。先生、それもっと言ってください(笑)

白河 「ベンチャーは不安定だから嫌だ」という学生も結構います。でも逆にベンチャーのトップからは「うちの会社に入ってくるのに、安定を求めてくるなんてけしからん」とお叱りを受けることも。LINEの元社長の森川亮さんは「社員が結婚したりして安定すると、会社はつまらなくなる」とおっしゃっていたのが印象的でした。

 軌道に乗せるまでの創業期は、本当に大変なのでその考えは一理あるとは思います。

白河 創業期の熱を求め続ける経営者もいる。私は創業期に入社した社員とそうでない社員とでは、志が違ってしまうのは仕方ないのかなと思っています。

 それは感じますね。ただ”熟れ頃ベンチャー”としては、社員が結婚などしてプライベートは安定しても、新しい商品作りや事業にはどんどんチャレンジしたいと思えるような環境を作ることが重要ですね。これからのボルテージの目指すべき方向です。

明日に続く。

<プロフィール>
東 奈々子
取締役副会長・ファウンダー
Voltage Entertainment USA, Inc. CO
津田塾大学卒業後、総合職として博報堂に入社。2000年パートナー津谷の起業に伴いボルテージへ参画、副社長に。ボルテージ東証一部上場を経て、13年から米国進出のため、3人の子どもと共にサンフランシスコへ。16年3月に帰国

白河 桃子
少子化ジャーナリスト、作家、相模女子大客員教授
東京生まれ、慶応義塾大学卒業。婚活、妊活、女子など女性たちのキーワードについて発信する。山田昌弘中央大学教授とともに「婚活」を提唱。婚活ブームを起こす。経産省「女性が輝く社会のあり方研究会」委員。1億総活躍会議民間議員。著書に『「専業主夫」になりたい男たち』『専業主婦になりたい女たち』(ポプラ新書)、『女子と就活』(中公新書ラクレ)など

文/白河桃子