白河 日本の男性も、日本社会が共働きでないと成立しないような時代に入りつつあるなか、若い世代を中心に変わってきています。

 世代によって、意識は違ってきているんですね。

白河 米国の働き方でいいなと思うのは、出入りが柔軟なことです。仕事のブランクがあっても履歴書はゼロにならないじゃないですか。

 米国人のキャリアでは、1回起業してブラブラする時期があるのが普通ですしね。それで、ダメでまた企業に戻るっていうのが多いようです。再就職でも、それが当り前なので特に問題にならない。

白河 それができると、いいですよね。

 チャレンジすることがかっこいいとされていますから。

白河 戻ってきたとしても、かっこいいんですね。

 そうです。ボルテージのサンフランシスコの子会社のリーダー層も、そうした経歴を持つ人が多いです。

白河 そういう土壌が、イノベーションを生むんでしょうね。

 その点、日本は終身雇用の就業観を引きずっていて、まだまだ柔軟とは言えませんね。

白河 日本を離れていた間に、日本社会もすごく変わったと思いますが、逆に東さんには海外の状況をどんどん発信していって頂きたいですね。

 今後はそれも自分のミッションの一つだと思っています。発信もそうですし、ボルテージで実践もしなくてはと。

白河 日本のIT業界は開かれているようで、意外にドメスティックですからね。

 実はワイワイ若い男性社会なんですよね。でも、ボルテージの意義はそこを乗り越えることだと。創業して16年が経ち、時代に合わせて色々な立場の男女とも社員が納得感を得られる企業経営をやっていかないといけないと思うと、あれこれ考えて夜眠れなくなったりもします。

白河 でも、これだけワークライフバランスのことを考えている経営者がいるだけでも、皆さん幸せだと思いますよ。

 有難うございます。プライベートを犠牲にしないで「安心」して仕事ができ、かつベンチャーのホットな「チャレンジ精神」が失われないような両輪が成り立つ環境を作ることが、企業の永続的な成長につながると確信しています。今日はそのヒントをいただき、背中を押していただいたような気がします。米国で得た経験も生かして、これからもトライし続けたいと思います。

<プロフィール>
東 奈々子
取締役副会長・ファウンダー
Voltage Entertainment USA, Inc. CO
津田塾大学卒業後、総合職として博報堂に入社。2000年パートナー津谷の起業に伴いボルテージへ参画、副社長に。ボルテージ東証一部上場を経て、13年から米国進出のため、3人の子どもと共にサンフランシスコへ。16年3月に帰国

白河 桃子
少子化ジャーナリスト、作家、相模女子大客員教授
東京生まれ、慶応義塾大学卒業。婚活、妊活、女子など女性たちのキーワードについて発信する。山田昌弘中央大学教授とともに「婚活」を提唱。婚活ブームを起こす。経産省「女性が輝く社会のあり方研究会」委員。1億総活躍会議民間議員。著書に『「専業主夫」になりたい男たち』『専業主婦になりたい女たち』(ポプラ新書)、『女子と就活』(中公新書ラクレ)など

文/白河桃子