生きていればだれだって苦難に遭遇する。前もって察知できることもあれば、不意を襲われることもある。子どもの急死のような悲劇もあれば、恋愛の破局やかなわなかった夢のような苦悩もある。こういうことが起こったときに考えるべきは、「次にどうするか」である。

 レジリエンスとは、逆境が襲いかかってきたときにどれだけ力強く、すばやく立ち直れるかを決める力であり、それは自分で鍛えることができるのだと私は学んだ。それはめげない、へこたれないといった、精神論ではない。精神を支える力を育むことなのだ。

レジリエンスとは、精神を支える力を育むことなのだ(C)PIXTA
レジリエンスとは、精神を支える力を育むことなのだ(C)PIXTA

 ハッピーエンドで終わる物語ばかりではないこともわかっている。残念なことに、逆境は均等に分かち合われていない。疎外され権利を剥奪された集団が、不釣り合いに多くの逆境と悲嘆に耐えているのが現状である。

 それに、私たち家族はつらい経験をしたけれど、家族や親族、友人、同僚の手厚いサポートがあり、経済的にも恵まれていることは重々承知している。また、逆境に力強く立ち向かう方法を示したからといって、逆境のそもそもの根源を断つ責任を免れるわけではないこともわかっている。私たちが社会や企業のなかで公共政策の充実をはたらきかけ、お互いに手を差し伸べることでこそ、苦しむ人を減らしていけるのである。

 トラウマを経て成長できることを、私は身をもって学んだ。壮絶な経験を経てもなお強さを身につけ、深遠な意味を見出すことはできるのである。そして、「トラウマ前の成長」も可能なはずだと、私は信じている。悲劇を経験しなくても、この先待ち受けるさまざまな試練のためのレジリエンスを育むことはできるはずだ。

 私自身、まだ立ち直りの途上にいる。鋭い悲嘆の霧は晴れたけれど、さびしさも、デーブを焦がれる気持ちもまだここにある。いまも自分なりの方法を模索している。しかし、たとえ人生の濁流にのみ込まれても、水底を強く蹴って水面に顔を出し、再び息をつくことはできるのだと、そう私は学んだのである。

シェリル・サンドバーグ、アダム・グラント著「OPTION B(オプション B)――逆境、レジリエンス、そして喜び」
(日本経済新聞出版社)より抜粋
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