年収は下がるも「最もOLっぽい生活」

――その後、フリーランスになったのでしょうか。

 いいえ、2社目を辞めて半年くらい経った後に、眼鏡会社に再就職したんです。新卒から数えると3社目ですね。

――異業種に転職されたんですね。

 レコード会社と眼鏡会社、異業種といえば異業種ですが、音楽業界で培ったノウハウを違う業界で生かせるのか試してみたくて、あえて全く違う業種にチャレンジしました。その眼鏡会社はベンチャー企業で、当時は次々に店舗数を増やしていた時期。宣伝から店頭での展開までの流れを一貫して見ることができたので、すごく勉強になりました。

 そして、眼鏡会社で働き始めたら、生活リズムが一変しました。土日は完全に休めるようになりましたし、深夜残業をすることもなくなりました。

 「20代のころは、遠洋漁業で長期間漁に出ているような生き方、働き方をしていたんだな」と実感しました。ずっと船に乗っているからお金は貯まるけど、使うところがない。一方、眼鏡会社に再就職してからは、仕事帰りに友達とご飯を食べたり、買い物に行ったり。振り返れば一番「OLっぽい」というか、人間らしい生活をしていましたね。だけど、年収は前の会社に比べたらグンと下がったんですよ。だからお金が全然貯まらなくて。

社内での出世より、自分自身のスキルを積みたい

――その眼鏡会社も、その後退職されたんですよね。何かきっかけはあったんでしょうか。

 そうです、35歳のときに。3社目の眼鏡会社を退職しました。理由は、「またちょっと違うことをやろうかな」って。ざっくりとした考えしかなかったです(笑)。もう3社目となると、「辞めても、次の仕事は何とかなるかな」と。

自分なりの目標を達成したら、ひと呼吸ついてもいい (c)PIXTA
自分なりの目標を達成したら、ひと呼吸ついてもいい (c)PIXTA

 3社を経験して、同じ環境で同じ仕事を続ける会社員より、「ロングスパンの季節労働者」のような働き方が肌に合うのかなと思うようになりました。「社内で出世したい!」という欲がまるでなかったので、自分自身がスキルを積めたと思えばそれで満足でした。

 例えばレコード会社であれば「日本人アーティストの海外デビュー」、眼鏡会社では「小売業の商売の流れをつかむ」というように、それぞれ目標がある。自分自身で「この目標を達成した」と思えれば、その時点でひと区切りにしてもいい。それが、転職を通して感じたことでしょうか。