もう会えないあの人に想いを届けたい――。福島県いわき市に設置された「天国ポスト」には、この世にはいない大切な人たちに感謝の気持ちを込めた手紙が投函されています。これは、涙活プロデューサーの寺井広樹さんが考案し、作家の志茂田景樹さんが命名したもの。今回、「涙活」から生まれたという心温まるそんな試みが、1冊の本になりました。「天国ポスト」が生まれたきっかけやその背景を寺井さんに聞きました。
――『天国ポスト』は、どういうきっかけで生まれたものなのでしょうか。
寺井さん(敬称略) 東日本大震災の被災地である福島県で涙活イベントを行ったとき、多く聞かれたのが、「亡くなった人にありがとうを言いたかった」という声でした。そんな話を聞くうち、大切な人を亡くした悲しみをケアするグリーフケアとして、「もう会えない人への手紙を投函するポストを作ったらどうだろう?」と考えたんですね。私自身、大好きだった祖父母の命日に手紙を書くことがあるのですが、文字にすることで心が整理されて気持ちが癒されることを実感していました。
ポストは、いわき市の元郵便局長である猪狩さん宅の庭と、東京豊島区の「千年画廊」に設置されています。これまで1600通ほどの手紙が届いていますが、そのなかから私がセレクトさせていただき、1冊の本にまとめさせていただきました。
――短い文ですが、どの手紙にもドラマが詰まっていますね。特に印象に残っている手紙はありますか?
寺井 どれも非常に心に残っていますが、結婚式の2カ月前に父親を亡くした女性の手紙は読んでいて胸が苦しくなりました。お父さんも娘の結婚式に出席するために、医師に延命を望んでいたけれど叶わなかった。お父さんも無念だったと思います。
やはり皆さんすごく思い入れがある手紙ですから、本の構成や順番にも頭を悩ませましたね。ひとつのページに並べて載せるのは失礼かなと思い、それぞれ見開きページで載せています。