作家の志茂田景樹さんとのコラボが生まれた理由

涙活イベントをきっかけとして次々と新しい展開を生み出す
涙活イベントをきっかけとして次々と新しい展開を生み出す

――この本は、作家の志茂田景樹さんとのコラボによるものですが、どういうご縁で?

寺井 実は2作目のコラボになります。1冊目は、僕が原案で志茂田先生に文章を書いていただく形で、絵本『ぼくの天国ポスト』を作らせていただきました。
 きっかけは、志茂田先生が長年続けている絵本の読み聞かせ会に参加させていただいたこと。魂のこもった読み聞かせに感涙し、厚かましくも「泣きの絵本を一緒に作りませんか?」とお願いしたところ、快諾してくださいました。僕が、「ありがとうポスト」という名前で、亡くなった方への手紙を出すポストを作ろうと思っているという話をしたところ、「それなら“天国ポスト”のほうがいいんじゃない?」と命名していただいたんです。
 1冊目の絵本では、川嶋あいさんが僕との共同作詞でテーマソングを作ってくださいました。憧れの作家さんや大好きなアーティストの方とこうして作品を一緒に作らせていただけるのはまさに夢のようです。

――涙活イベントからどんどん新しい展開が生まれていますね。今も毎日たくさんの手紙が届くという『天国ポスト』ですが、なぜ支持されているのだと思いますか?

寺井 皆さん、家族や周りの人、ペットなど、大切な誰かを亡くされた経験を持っていますよね。今はこの世にいないけれど、感謝の気持ちを伝えたいという人が多いのかなと感じています。手紙からは「どんなに悲しいことがあっても希望を見出して生きていく」というメッセージが伝わってくるんです。

――あとがきで、「死は本当の別れではない」と書かれていたのが印象に残っています。“さようなら”ではなく、心の中に居続けるような手紙がほとんどだった、と。“それなら本当の別れは、記憶から消えたときなのかもしれないな”など、いろいろ考えさせられました。寺井さん自身の死生観にも影響がありましたか?

寺井 死生観は変わりましたね。手紙の内容は、当初想像していたイメージとはかなり違っていたんです。今もどこかで生きている人に語りかけるようなものが多かった。まるで生きている相手のようだと思った瞬間、「書いている人にとっては、今も心の中でしっかりと生き続けているんだな」と確信しました。皆さんの手紙を目にするうちに、死を悲しむのではなく、前向きに捉えていこうという気にさせられましたね。

――「天国ポスト」のこれからの展開を教えてください。

寺井 可動的でポストを増やしていこうと考えています。人々の心に寄り添い、辛い気持ちを癒すひとつの方法として根付くといいなと思っています。

2日公開の次回は「天国ポスト」「涙活」「離婚式」などブームを生み出す仕掛け人・寺井さんの発想力の秘密に迫ります。

文/西尾英子 写真/小野さやか


『天国ポスト~もう会えないあの人に想いを届けます』
 著者:寺井広樹
 出版:トランスワールドジャパン
 価格:1404円(税込)
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