「チャレンジド(障害者)を納税者にできる日本に!」を合言葉に、ICT(情報通信技術)を使った障害者の自立、就労支援を手掛ける社会福祉法人プロップ・ステーション。「ナミねぇ」こと、竹中ナミさんは自身が重症心身障害を持つ娘を授かったことをきっかけに、この活動を推進してきた。ナミねぇは、障害のある人を「チャレジンド」と呼び、誰もが持てる力を発揮できる社会の実現を目指す。(インタビュアー/麓幸子=日経BPヒット総合研究所長・執行役員)

ナミねぇが相模原障害者施設殺傷事件や「感動ポルノ」について語った
前編の記事は「障害者=かわいそう」じゃない 私らは堂々と生きる!

チャレンジドを納税者にしたい

――プロップ・ステーションの活動は、チャレンジド(障害者)の可能性や能力を引き出そうという発想なんですね。

竹中さん(以下、ナミねぇ) 障害のある人、高齢者もそうですが、できないことだけに目を向けて「補う福祉」は結局、循環しない福祉です。いつまでたっても「福祉予算が足りない」状況は変わりません。だから私たちはあえて「チャレンジドを納税者にできる日本に」というスローガンを立てました。初めのころは「障害者から税金を取るなんて!」と、いろんなところから批判されましたけどね(笑)。

「チャレンジドにも“税金を払う権利”があるべきなんです」
「チャレンジドにも“税金を払う権利”があるべきなんです」

――なぜ、そういう発想が生まれたのでしょうか。

ナミねぇ これはね、アメリカのジョン・F・ケネディ大統領の教書に「私はすべての障害者を納税者にしたい」という言葉があるんです。障害があるから働けない、税金が払えないと決めつけることから差別が始まると彼は考えた。だから“税金を払う権利”を障害のある人にも持たせるように国家がしないといけない、という意味なんです。

――納税の“義務”ではなく?

ナミねぇ 日本では納税って「取られる」「納めさせられる」というネガティブなイメージですけど、本来は社会を支える「権利」だと思います。日本ではチャレンジドの力をどうやって社会や企業の中で生かすかという発想がないから、企業に対して一定割合の障害者の雇用を義務づける法定雇用率を決めている。でも、そんなのは差別だと思います。チャレンジドの世界は、職業の選択肢も働くチャンスも少ないのが現状です。

――障害者の法定雇用率はどうあるべきと思いますか。

ナミねぇ まずは、チャレンジドを特別な枠でとらえるような制度設計の思想そのものが変わらないといけないと思っています。

 政府が「一億総活躍社会」と言っていることに対して、いろいろな意見がありますが、私たちは国のトップが「一億総活躍」って言った以上は、ほんとにどんな人も活躍できるようにしてほしいし、そのための提案をしています。

 私はいろいろな省庁の委員もしていますので、いつも「チャレンジドの力を生かせなかったら、高齢者社会は乗り切れませんよ、本当に一億総活躍が必要ですよ」と訴えています。

 そのためには雇用だけではなく、パソコンひとつあればベッドの上でも働けるようなアウトソーシングの仕事がどんどん増えるようにすべきだし、それも雇用率に換算するような仕組みを作ってほしいと提言しています。いろいろな働き方を応援する企業が、社会的責任を果たしているとみなされるような制度に変えていく必要がありますよね。